『「永遠の初心者を脱する!」ための競馬思考』11 夏競馬の三歳馬・古馬の比較などについてあれこれと。

三歳と古馬の混合戦が始まると、よく「三歳馬が強い」と言われます。
2018年を最後にして降級制度(四歳馬の多くが1~2クラス下のレースに出走出来るようになる制度)が廃止されましたので、その傾向はより顕著になっていますが、それ以前から言われていました。

その理由としてよく挙げられるのが「斤量面で三歳馬が有利」というものです。
私にはぴんと来ませんでした。
少し脱線します。

似た例で、若手の減量騎手の存在が挙げられます。
勝ち鞍の数によって、1キロ減、2キロ減、3キロ減、2021年からデビューの女性新人騎手に至っては4キロ減もの恩恵を受けることが出来ます。

それでは、減量なしも含めて、この内のどれが優秀な成績を収めているでしょうか?
勝率・連対率・複勝率、単勝・複勝の回収率、全てにおいて、減量なし、が最も優秀なのです。

続いて乗り替わりの成績も見てみましょう。

参考資料は「JRA-VANのデータde出~た 第1003回 ▲(3キロ減)騎手の狙いは?」です。

減量あり→減量なし、と、減量なし→減量あり、の乗り替わり成績も全くと言って良い程、変化がありません。
ここでも、減量なし→減量なし、の乗り替わりが、勝率・連対率・複勝率、単勝・複勝の回収率、全てにおいて最も優秀なのです。

私はこのデータをある程度知っていましたから「斤量面で三歳馬が有利だから」という言説にぴんと来なかった、という訳になります。
三歳馬の恵量は巧い騎手が減量騎手になったようなものだ、とも言えますが、それを考慮しても斤量差の影響が如何ほどのものかは分かりかねます。様々な資料に目を通してみても意見に統一感が全くありません。
カンカン泣きする馬(重い斤量に苦しむ馬)もいればそうでない馬もいます。
競馬に詳しい人も斤量に関しては、何となく(1キロ0.2秒くらい……のように)、で語っている部分が大きいように思います。
血統面などから分析して予想ファクターに大きく組み込めれば、ハンデ戦予想の先駆者となって馬券で儲けられる……、かもしれません。

脱線しましたが、参考資料によると、3キロ減騎手は芝・ダートの逃げ・先行の好走確率と回収率が高い、特にダートの逃げ・先行が高い、という結果が出ています。

「減量を活かして逃げて欲しい」というコメントが「陣営から」よく出てきます。
予想家としてはイマイチだとしても、馬のことをよく理解している厩舎陣営が口にする意味は大きいでしょう。

斤量が最も大きく影響するのは上の参考資料も考慮に入れると、
逃げ・先行してしまえば、最後の踏ん張りが効く
という点になるでしょう。
ダートの成績が特別高いのも、最後の末脚比べになりやすい芝よりも、最後の我慢比べとなるレースが大半を占めるから、だと考えられます。

新潟芝1000mは軽量馬が走りやすい条件だと一部ではよく知られていますが、資料からは「スタートのダッシュ力にも影響する」と読みとれます。
が、これに関しては、騎手のスタートの巧拙、前に行きたいという意識も関係しているのでしょう。前走逃げた馬で逃げられないパターン、前走控えていた馬で逃げるパターン、共に多く見られます。

この資料では距離別成績が書かれていませんが、減量騎手はダートの中でも短距離になれば成績を更に上乗せしてくると推測出来ます。
その最大の理由は、ダートの短距離は中距離よりも基本的に逃げ・先行有利だというコース形態上の問題です。
減量によるダッシュ力が活かせますし、短距離の方が前傾ラップの我慢比べにもなりやすい、と言えるでしょう。
二つ目の理由は、中距離よりも短距離の方がペース配分など騎手の技量がそう要求されないこと、です。

実はこの話に関連して、私は今年(2021年)、二度驚かされたことがあります。その主役は、今年初登場した4キロ減の二人、古川菜穂騎手と永島まなみ騎手です。

 2021/3/21 中京7R 四歳以上1勝クラス ダート1400m

このレースでタケルラスティに騎乗した古川菜穂騎手は、4キロ減を活かして前半3ハロン33.8秒、4ハロン45.3秒という超が二度付くくらいのハイペースで逃げました。
並の馬ならバテて当然のペースです。
道中も後続を引き離す逃げになりましたが、直線も止まらず、二着に二馬身半、その後ろは六馬身も突き放す快勝をおさめました。
二着のフェアレストアイルはここが初ダートで、次走、好タイムで楽勝した程の馬でしたから、私はこの一戦だけで「ダート短距離での4キロ減の破壊力は凄まじい!」と衝撃を受けました。
その時計は馬場差を考慮しても非常に優秀な1.22.8で、間違いなくタケルラスティのベストパフォーマンスと言えるでしょう。
昇級してからはまだ入着がありません。
実は前走も古川騎手が乗っていたのですが、極めて消極的な騎乗で着外に終わりました。陣営コメントからも今回は強気に乗ってくると感じましたので、私は本命を打つことが出来ました(馬券は外れましたが……)。本命を打った私も想像していなかった驚くべきパフォーマンスを披露した、と言えるでしょう。

次は永島まなみ騎手で、先ほどと同じく中京ダート1400mです。
まるでタケルラスティのリプレイを観ているかのようなレースでした。

 2021/6/5 中京12R 三歳以上2勝クラス ダート1400m

アオイツヤヒメに騎乗した永島まなみ騎手は、前半3ハロン33.8秒、4ハロン45.2秒、というタケルラスティの逃げとほぼ同じラップでのハイペース逃げを打ちました。
4角を回っても手応えは楽なままで、あとは後続を突き放す一方。
最後は後続に四馬身をつける圧勝でした。
勝ちタイムも1.22.5と近く、これぞリプレイ、という二レースでしたから、是非、読者の方々にも観てもらいたいものです。

肝心の馬券の方は、締め切り25分前まではアオイツヤヒメが1番人気で「どうしてこの馬が?」と不思議でならなくて軽視してしまいました。
最終的には5番人気の9.1倍まで下がりましたから、オッズを見て失敗した典型例でした(二着馬が本命で、むしろ連系は売れていなかったからきちんと見ていれば買えたのですが……)。
最近はAI予想が盛んならしく、オッズの乱れ・変動が大きい、と言えるでしょう。
馬券の買い方についても、のちのち詳しく述べたいと思っています。
ここでは少しだけ。
馬券は妙味を考えて買わなければ勝てない、と断言できます。
いわゆる期待値予想で、今はどうやらその全盛期にあるそうです。
馬券裁判で有名になった卍さんも述べていることでもあり、非常に大切な考え方だと思っています。

話を戻します。
そもそもの話題は、夏の混合戦で三歳馬が強い理由、でした。

斤量面の恩恵も成長度の分も大いにあると承知の上で、また、ただし1勝クラスに限るという条件下で、私の出した答えは極めて単純明快なものです。

単純に三歳馬の方が古馬よりも能力が高いから
別に、若くて成長期だから強い、だとかそういうことを言っているのではありません。

これは番組編成上の問題です。
二歳・三歳限定の1勝クラスの数は、2020年6月~2021年5月末までで161レース組まれています。
対して、三歳上・四歳上の1勝クラスの数は766レースになります。

番組編成上、数の少ない二歳・三歳限定の1勝クラスで勝てる馬はそもそも強く、負けてきた馬でも1勝クラスにいる馬ではない、というパターンが非常に多いのです。
対して、古馬は一年間、1勝クラスを勝てなかった馬ばかりなのです。

同じ1勝クラスといえども、あまりフェアではない、と言えるでしょう。

私はスピード指数が有効なダートをメインに馬券を購入していますが、その指数だけ見ても「これはすぐ1勝クラスを卒業出来る」と感じる馬が非常に多く見つかりますし、実際、すぐに勝ち上がることが多いのです。

二歳・三歳のダート1勝クラスはハイレベル戦が多く、そこで惨敗していても指数が極めて高い、という場合も沢山見つかります。

着順、を重視して予想している人はまだまだいますから、美味しい配当にありつけることもよくあります。
あ、「着順を重視して予想する」も「永遠の初心者」の一例になりますね。能力比較で役立つ場合もありますので、一概には言えませんが。

芝の方でも、重賞を好走していた馬が1勝クラスにいることはざらにあります。

世代間比較が難しい、という人は多いでしょうからこの編成上の仕組みは理解しておいて損はないでしょう。

2勝クラスになってくると話は別です。
古馬の壁が厚くなってきます。

新潟ダート1800mで行われる2勝クラスと、三歳重賞レパードステークスの基準タイムがどのくらいか目安が付くでしょうか?
「先週の結果分析」では、レパードステークスが1.51.5で、2勝クラスが1.52.0です。

この基準タイムの持つ意味は、必ず知っておいて欲しい、と思うくらい予想において重要な事項です。
ダートは走破時計(に馬場差を考慮したスピード指数)が極めて重要だと言えます。
基本、前傾ラップになって全馬が能力を発揮しやすい、というのがまず一つ。
芝よりもトラックバイアスの影響が少なく、通った位置の有利不利が少ない、というのが二つ目の理由です。

では、前述した基準タイムの持つ意味。
レパードステークスで優秀な時計を出して勝っても、2勝クラスを相当優秀な時計で勝った、もしくは3勝クラスを水準級の時計で勝てた、程度の価値しかありません。
これはつまり、古馬混合のオープン戦で格好のカモになりやすい、とほぼイコールです。

不良馬場で行われた2020年レパードステークスは、馬場差を考慮してもややハイペース、と言える流れになり、その指数も3勝クラスで水準級という高い指数が出ました。
それでも古馬重賞では簡単に通用しないのです。
2020年レパードステークス後にオープン馬だったのは、ケンシンコウ、ミヤジコクオウ、デュードヴァンの三頭ですが、その後、人気になりながらもことごとく馬券外に飛んでいます。

ダートの古馬オープンで即通用する三歳馬は、そもそも相当に強い、というのは覚えておいて損はないでしょう。
また、ダートの古馬オープン自体の壁が厚く、3勝クラスを勝ち上がって人気になる馬も危険、と言えます。

レパードステークス後、古馬オープンに挑んで人気で馬券外に飛んだ馬は数多くいます。
通用しやすいのは、相当高い指数で入線した馬、もしくは追い込みで上位入線した馬、でしょう。

ダートは逃げ・先行で勝ち上がる馬が多い、というのはおそらく感覚的に想像がつくと思います。
それは上級クラスになると逃げ・先行馬の割合が必然的に増えるという結果をもたらします。
となると、逃げ・先行馬に不利なペースになりやすく、差し・追い込み馬が台頭しやすくなるのです。
ダートは下級条件では先行有利、上級条件になると差しも決まる、と言われますが、こうしたロジックが存在するからでしょう。

ダート界におけるこの構造も覚えておくべき事項だと思います。

また、これはダート界だけの構造ではありません。
「クラスが上がってペースが流れた方がレースがしやすい」という陣営コメントは芝でもよく聞かれます。差し・追い込み馬はその手のタイプが多いでしょう。
デビューしたばかりの2歳馬が走る函館2歳ステークスも上記の傾向が顕著です。逃げ・先行で勝ち上がる馬が大半を占めるため、確実にハイペースになります。
2011年~2020年の過去10年で前半3F33秒台は5回と、半数を占めます。
34.1秒が4回で、残りの1回は34.5秒です。
例年、2秒前後の前傾ラップになりますが、34.5秒でも1秒の前傾ラップとなっています。
2011年~2020年の間、3着内の30頭の内、逃げ以外を経験していた馬は24頭を占めます。逃げだけしか経験していなかった馬は6頭だけなのです。

重賞だけ賭けるという人は気づきにくいと思いますが、先の三歳馬と古馬の比較も含めて、競馬の番組編成上、登場してくる注意点は押さえておくべき、だと言えるでしょう。

最後にレパードステークス後、古馬オープンクラスに出走した馬の成績を載せて終わりたいと思います。

2020年
 1着ケンシンコウ 武蔵野ステークス6番人気11着
 2着ミヤジコクオウ ベテルギウスステークス3番人気10着
 4着ドゥードヴァン 武蔵野ステークス4番人気14着

2019年 ハイペース差し決着
 1着ハヤヤッコ ポルックスステークス3番人気2着
 2着デルマルーヴル 白山大賞典2番人気2着

2018年
 1着グリム 白山大賞典2番人気1着
 2着ヒラボクラターシュ ラジオ日本賞2番人気1着
 4着ドンフォルティス 白山大賞典3番人気10着

2017年
 1着ローズプリンスダム みやこステークス7番人気7着
 2着サルサディオーネ レディスプレリュード4番人気14着
 3着エピカリス みやこステークス1番人気8着
 12着タガノディグオ 白山大賞典4番人気4着

2016年 タイムランクAの超ハイレベル戦
 1着グレンツェント みやこステークス1番人気2着
 2着ケイティブレイブ ラジオ日本賞1番人気2着

2015年
 1着クロスクリーガー その後出走なし
 2着ダノンリバティ BSN賞2番人気1着
 4着ゴールデンバローズ 武蔵野ステークス3番人気11着
 8着ライドオンウインド ポルックスステークス7番人気16着

2014年
 1着アジアエクスプレス 名古屋大賞典1番人気2着
 2着クライスマイル 総武ステークス4番人気12着
 3着ランウェイワルツ BSN賞3番人気2着
 4着レッドアルヴィス 武蔵野ステークス2番人気6着
 6着ノースショアビーチ ブラジルカップ3番人気10着

2013年
 1着インカンテーション ラジオ日本賞2番人気6着
 2着サトノプリンシパル シリウスステークス1番人気15着
 3着ケイアイレオーネ シリウスステークス5番人気1着
 9着アムールポエジー レディスプレリュード5番人気9着

2012年
 1着ホッコータルマエ みやこステークス5番人気3着
 2着ナムラビクター 神戸新聞杯15着は芝なので除外。その次走ブラジルカップ1番人気1着
 8着フリートストリート ベテルギウスステークス3番人気9着

2011年
 1着ボレアス マイルチャンピオンシップ南部杯5番人気11着
 2着タカオノボル ブラジルカップ2番人気4着
 10着カラフルデイズ レディスプレリュード5番人気10着

以上。
単純に、
人気より下の着順の馬が21頭。
人気と同じ着順の馬が4頭。
人気より上の着順の馬が7頭。
未出走が1頭。

この集計方法だと1番人気を背負った馬は厳しくなりますが、それでも過剰人気傾向にあるのは間違いないでしょう。
ダート馬は高齢でも活躍しますが、その分、ダート馬として成熟するのにも時間がかかるものなのです。
近年、ルヴァンスレーヴやクリソベリルのように早期からダートの絶対王者として君臨する馬が増えてきたように思いますから、もしかすると今後、育成方法の進歩によって傾向も変わってくるかもしれません。

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