『「永遠の初心者を脱する!」ための競馬思考』12 騎手について。

今回は騎手について少し語ります。
読者の皆様は騎手を重視しているでしょうか?

実は私は、競馬を見始めた1995年から今年(2021年)に至るまで、騎手を予想ファクターからほぼ排除していました。
なぜなら「どんなに上手な騎手でも下手に乗ることがあるし、その逆もまた然りである」という、当然といえば当然の理由から、です。

とはいえ、外国人ジョッキーがビッグレースを総なめする様を目の当たりにするたびに「いつか騎手を予想ファクターに入れなければ駄目だな……」とは思ってはいました。

ですが、どうやってファクターに入れるべきなのか、その具体的な方法が思いつきませんでした。
下手乗りはどんなに上手な騎手でもやらかす、と考えていた訳ですから、単純に技術の巧拙だけを予想ファクターに入れるつもりは全く眼中になかった。
昔、初めて騎手が実名化されたダビスタ96において、S、A、B、C、Dなどと騎手をランク付けをしてトラブルに発展しましたが、巧拙を予想ファクターに入れるというのは、これに近い発想に感じます。
しかしながら、技術の巧拙こそ騎手で重要だと考えている人は少なくないと感じます。

昔、ウインズ札幌で中年男性から声をかけられたことがあります。
「お兄ちゃん、次のレース、何買うの?」
確か、2003年の五頭連峰特別だったと思います。
「この馬です」
新聞を指差した先の馬名は、メジロライアン産駒のシャフツベリーという馬でした。すると、その男性は、
「柴田大知か……。来ないぞ」
と言ってのけました。
私はその発言を適当に受け流して、構わずシャフツベリーの馬券を買いました。
内心では「シャフツベリーは柴田大知で連勝してきているのに……」と思いつつ。
連勝している、が根拠になるのは「手が合っているのだろう」という発想から来ているものです。
一方、中年男性は、柴田大知の騎手としての技量を頼りにして発言したのでしょう。
当時の私の発想も中年男性の発想も、どちらも重要な視点が欠けている、と今では思います。

ロジカルの視点からいえば、騎手の巧拙というのは非常に漠然とした考え方だと思います。
社台の吉田照哉氏が「デットーリが乗ると5馬身違う」と昔、リップサービスだと思われる発言をしましたが、騎手の巧拙とはこの発言同様の言説だと感じるのです。
では、柴田大知が乗ると何馬身違うのでしょうか?
おそらく、この問いに対してロジカルに答えられる人はいないと思います。
それに「何馬身違う」という言説は、勝つか負けるかという、勝負において最も重要な点を軽視しているように思います。
何馬身はおおよそタイム換算出来ますが、いくら走破タイム・スピード指数が際だっていても、レースではなるべく上位入線を果たすことが重要でしょう。

私は、騎手の巧拙「だけ」を予想ファクターに入れることに反対です。
その理由の一つは、馬券内に来る率は高くても回収率が取れない、と思われるからです。
たとえば、ルメール騎手騎乗の馬は基本的に過剰に人気します。
ここで、トップジョッキーであるルメール騎手と川田騎手、また、騎乗技術が確かだと言われていて、今年すでに過去最多の勝利を挙げている横山和生騎手の成績を比べてみましょう。
本書における集計期間は全て2018年頭~2020年末です。

ルメール 勝率26.5%・連対率44.4%・複勝率56.2%
      単勝回収率75% 複勝回収率82%

  
川田   勝率23.2%・連対率41.2%・複勝率53.2%
      単勝回収率80% 複勝回収率88%

横山和  勝率5.1%・連対率10.9%・複勝率16.8%
      単勝回収率97% 複勝回収率84%

ルメール騎手と川田騎手は馬券内率がそう変わらないにもかかわらず、単複いずれも回収率では川田騎手が上回っています。
横山和生騎手も、馬券内率は大きく下がりますが、回収率ではルメール騎手を上回っています。

ルメール騎手は、能力で劣る騎手人気の馬ですら馬券内に持ってくることがしばしば見受けられますので、その騎乗技術が確かなのに異論はありませんが、回収率ベースで見れば優れている訳ではありません。

それなら回収率ベースで騎手を判断すれば良い、と思われるかもしれませんが、これは一度大穴をあければ大きく変動しますから、単純に回収率だけで判断するのは危険です。

私は今まで騎手に関する本を数冊買いました。
その中には、騎手のコース別成績のデータ、特に回収率を中心に提示してあるものがありました。騎手にも得意としているコースがあるため、それを知るのには有用ですが、単に偶然だろう、という場合も多いと感じました。
また、targetで調べれば分かる内容でもあります。
競馬予想本の中でも「満足出来る質」に満たない本の代表格だと思いました。

樋野竜司氏が毎年出している「政治騎手」シリーズという本があります。騎手は、政治力>戦略力>技術力、の順に重要だとして、政治力を中心に語っている本です。
エージェント、師弟関係、親戚関係などの騎手の政治力は、短いスパンで変わることも多く、毎年出版されているのはありがたい限りでしょう。読み物としても競馬界の内情が分かって非常に面白いです。
しかしながら、本書も「馬力振り絞りメーター」という「巧拙」を重視しているように読めて、私の要望に十分に応えてくれる本ではありませんでした。

私が断然オススメする騎手本は『競馬記者では絶対に書けない騎手の取扱説明書』TARO著、になります。
これこそ、私の要望に完璧に応えてくれる本でした。
今年、私が騎手を予想ファクターに取り入れることが出来たのは、この本のおかげ以外の何者でもありません。まさに新たなる競馬「思考」を目覚めさせてくれた本だと言えましょう。

本書の何が優れているかと言えば、JRA全ジョッキー(!!!)の騎乗スタイルを中心に書かれてある点です(ただし、あまり活躍していない騎手や若手は数行で済ませてあります)。
「上手いか下手かは関係ない。馬券に利用出来るかどうかだ!」
帯にはそう書かれています。

騎手の騎乗に対して不平・不満、時には罵詈雑言を並べる人は少なからずいますが、各々の騎手には騎乗スタイルというものがあります。
たとえば、柴田善臣騎手はレースの流れに乗せる騎乗が多く、積極策に出ることは極めて稀です。彼が先行タイプの馬に乗って中団に控えるというのは、言ってみればごく当たり前の事象と言えるでしょう。

本書の集計期間内で、彼は1006回の騎乗機会がありましたが、初角を1番手で通過したのは、僅か55回です。確率にして5.4%になります。

対して、積極的な騎乗が武器の西村淳也騎手は1730回騎乗して、初角先頭通過が192回あります。確率にして11.1%になり、ダブルスコアを付けています。

他、積極性に欠けるジョッキーの中では、秋山真一郎騎手が4.8%、丸田恭介騎手は3.3%しかありません。

全騎手の平均逃げ率は7.6%(「データde出~た 第1385回 2019年の各種データから最新の「逃げ騎手」を分析!」より)になりますが、騎手によってこれだけ騎乗スタイルに差が出るのだと分かるかと思います。

なお、「馬質によるのでは?」という疑問が沸くかもしれません。
もちろんそれもありますが、ルメール騎手が6.9%、川田騎手が7.2%、トップジョッキーで馬質が良いにもかかわらず、平均以下です。
ポツン、と揶揄されることの多い横山典騎手に至っては5.5%のみ、になります。

騎手は自分の騎乗スタイルを簡単には変えられません。
私は昨年まで「騎手は馬に応じた乗り方をする」と漠然と思っていましたが、全くそうではなかったのです。想像を遙かに超えて、騎手はワンパターンな騎乗しか出来ません。

若手ならいざ知らず、ベテランである柴田善臣騎手が騎乗スタイルを変えることはまずないでしょう。
ですから、柴田善臣騎手が消極的な競馬をしたからといって怒っていてはいけないのだと思います。
自分の理想とする乗り方を騎手に期待してもいけません。

「期待する」よりも「利用する」のです。

騎乗スタイルを知ってさえいれば、それが可能になります。
柴田善臣騎手が消極的なら、そのスタイルが向くだろう馬を買い、向かない馬は消せば良い、と言えるでしょう。
集計期間内で、彼が重賞で騎乗したのは45回ありますが、逃げたのは放っておいてもテンの速さで逃げられるマルターズアポジーの4回のみです。
勝った2勝はデンコウアンジュでの差し切り。
3着内は8回ありますが、マルターズアポジーの逃げとフローラステークスのパイオニアバイオを除いた6回は差しでのものです。
 
また、騎手の特徴は展開を予想するにおいても当然大きな意味を果たします。

今年に入るまで私は騎手のスタイルを知らなかったため、今なら重めの印を打たなかっただろうという馬が思い浮かびます。

全て武豊騎手の騎乗馬です。
彼の特徴の一つは、枠なりの競馬をすること、と言えるかと思います。
外枠を引いたら無理に促してまで行かないのです。

2020年ヴィクトリアマイルの本命コントラチェック
同年クイーンステークスの本命サムシングジャスト
同じくエリザベス女王杯の対抗エスポワール

全て外枠でしたが、どれも無理に位置を取りにいきませんでした。
コントラチェックは積極的な競馬をすると思って購入したのですが、内の様子を見て、逃げたトロワゼトワルから離れた二番手に控えました。トロワゼトワルが4着に頑張っただけに、当時は「もっと強気の競馬をしてくれれば……」と思いましたが、武豊騎手にそれを望む方がお門違い、だったのです。

サムシングジャストは外から枠なりの競馬でほぼ最後方から。直線はモタれたのもあり、ほとんど追えず終いで終わってしまいました。
エリザベス女王杯は誰も逃げる素振りがなく、ノームコアが逃げたレース。元来、先行馬のエスポワールも行く気を見せず、ブービー負けでした。

いずれも武豊騎手の特徴を知っていれば、印を落としていたはずだと思います。
あくまで、特徴、だということは留意しておいてください。
武豊騎手の逃げはキタサンブラックを例に出すまでもなく非常に上手い。
集計期間内の302勝の内、72勝を逃げで挙げています。
逃げ率も12.4%と非常に高い。

ただし、元来、スピードがあって楽に逃げられる馬、枠の並びや相手関係を考慮して逃げる、という場合が非常に多いのです。
マテラスカイ、モズスーパーフレアはスピードがあって逃げられるタイプです。
インティでは逃げ切りが鮮やかですが、行く馬がいるレースでは控えています。最近では脚質転換も図っていますね。
メイショウテッコンでの日経賞の逃げ切りは、最内枠を活かして絶妙なラップを刻むという武豊の逃げの神髄が詰まっているレースだと思います。

とにかく、TARO氏の『競馬記者では絶対に書けない騎手の取扱説明書』は、私に新たな「競馬思考」をもたらしてくれました。
読んだ当初は、本書に書いてあることが本当なのかどうか、様子を見ながら馬券を購入していました。
一番に驚いたのは、東京新聞杯のサトノウィザードだったかと思います。
鞍上の鮫島良太騎手は「戦術は大外ぶん回し一択!」「ジャイアニズム騎乗」と酷評されていたのですが、内枠でもあり、本当にそう乗るのか半信半疑でした。
スタートで出遅れたサトノウィザードはすぐ外に出して上がっていき、直線も一番大外に進路を取りました。上がり最速の脚は使いましたが、外を回すロスが響いて9着敗退。まさにジャイアニズム騎乗、と呼ぶ他ありませんでした。

以来、騎手はよく見るようにしました。
その大切さを教えてくれたのは、マイネル軍団の主戦・柴田大知騎手です。彼の特徴は「逃げ残りの穴」「追えない」と書かれてあります。

マイネルユキツバキ
マイネルイリャルギ
マイネルレンカ
ユーバーレーベン(冠名ありませんが、ラフィアンの馬です)

以上の馬の成績表を見るだけで一目瞭然です。
全て、柴田大知騎手から乗り替わった途端に好走しています。

マイネルユキツバキは柴田大知騎手が乗って着外続きだったのが、川田騎手に乗り替わった途端、3着、1着と一変。
マイネルイリャルギも同様で、デムーロ騎手、川田騎手に乗り替わった途端に2着、2着、1着と好走しました。
マイネルレンカも柴田大知騎手が7回乗って3着2回が最高だったところ、3キロ減の小林修斗騎手に乗り替わって楽勝しました。本命だったのですが、まさかここまで一変するとは思いもしませんでした。

オークス馬ユーバーレーベンは柴田大知騎手で唯一掲示板を外す惨敗を喫していますが、その騎乗っぷりは酷いの一言に尽きます。
道中は内で狭くなってずるずる位置を悪くして、直線も馬がヨレていました。真っ直ぐ走ってからは一気に差を詰めましたが、時すでに遅し。あの騎乗ぶりを見ていれば、阪神ジュベナイルフィリーズの絶好の穴!として買えたと思うくらいの酷さでした。

柴田大知騎手の「追えない」という特徴は、素人がレースを観る限りではあまり分からない要素かなと思います(私は自分で見て分からないことを予想ファクターにあまり入れたくありません)。私も耳にするだけで真剣に考えたことがあまりありませんでした。が、結果として出ている、競馬関係者も口にしているのですから「追える」「追えない」は確かにあります。

それを証明するファクターが一つあります。
騎手と馬体重の相関関係です。
豪腕と名高い内田博幸騎手は500キロを超える大型馬の成績が良い、と出ています。
 
 500キロ以上 勝率7.9%連対率16.0%複勝率22.7% 単勝回収率100円 複勝回収率77円 
 500キロ未満 勝率6.1%連対率13.4%複勝率20.2% 単勝回収率56円 複勝回収率61円

大型馬の方が成績が良いのは当然ですので、この場合、リーディング順位の方が当てになるでしょう。
500キロ以上の成績は集計期間内で45勝・リーディング13位になります。
一方、500キロ未満になると、106勝・リーディング25位まで下がります。

藤田菜七子騎手は馬体重が軽い馬の方がリーディング成績が良いです。

 450キロ以下 勝率3.9%連対率9.9%複勝率14.1% 単勝回収率33円 複勝回収率50円
31勝リーディング19位
 451キロ以上 勝率6.8%連対率12.5%複勝率17.0% 単勝回収率48円 複勝回収率49円
74勝リーディング33位

この差はもしかすると、馬体重に応じて陣営が依頼する騎手を選んでいる、のかもしれません。

少し似たような話になりますが、ルメール騎手を乗せる時は陣営も下手な仕上げでは出して来ない、と聞きます。せっかくトップジョッキーに乗ってもらうのですから勝負気配もあるでしょうし、仕上がりが悪いと騎手からの心証も悪くなるでしょう。
事実、リーディング上位騎手は休み明けでも成績をそう落としません。
休み明けでも勝負になると思えば、厩舎陣営も有力騎手を確保してくるから、という理由が大きいでしょう。
なお、「競馬は単純な方程式ではない」ので、休み明けは騎手だけで判断するよりも、厩舎の特徴や調整過程、馬齢なども加味して考えた方がベターだと思います。

休み明けの馬の全成績
 勝率6.9%連対率13.2%複勝率19.4% 単勝回収率75円 複勝回収率73円
休み明けを除いた馬の全成績
 勝率7.4%連対率15.1%複勝率22.7% 単勝回収率73円 複勝回収率75円

先ほど挙げたルメール、川田、横山和、三名の騎手の休み明け成績を載せておきましょう。
まずは、全成績から。

ルメール 勝率26.5%・連対率44.4%・複勝率56.2%
      単勝回収率75% 複勝回収率82%

  
川田   勝率23.2%・連対率41.2%・複勝率53.2%
      単勝回収率80% 複勝回収率88%

横山和  勝率5.1%・連対率10.9%・複勝率16.8%
      単勝回収率97% 複勝回収率84%

休み明け成績

ルメール 勝率24.7%・連対率38.8%・複勝率52.5%
      単勝回収率70% 複勝回収率79%

川田   勝率24.7%・連対率42.7%・複勝率53.5%
      単勝回収率82% 複勝回収率95%

横山和  勝率4.5%・連対率8.1%・複勝率14.0%
      単勝回収率186% 複勝回収率87%

ルメール騎手が予想外に苦戦していますが、それでもなお、高い馬券内率を誇っています。
川田騎手に至っては休み明けの方が成績を上げてきています。これは休み明けから仕上げてくる中内田厩舎と蜜月の関係にあることも多少影響しているかもしれません。
横山和生騎手は集計期間中はまだブレイク前ですので、馬券内率を下げてくるのは想定内です。
なお、単勝回収率が非常に高くなっていますが、大穴で数度勝っていることがこれを大きく引き上げています。集計期間内の勝利数は10勝で、サンプル数としては少なすぎますから、これをもって「横山和の休み明けは買い」と判断されぬよう留意してください。

他、リーディング上位の常連の戸崎騎手とデムーロ騎手は休み明けで勝率を上げてきています(全ての休み明けデータを見ても、複勝率は勝率・連対率よりも下げてきていますから、いくら馬が仕上がっていたとしてもピンかパーな結果になりやすいのでしょう)。

これらは書きながらtargetで調べた結果です。
targetではこうして容易にデータを取ることが出来ますので、元来、本でわざわざ提示するようなデータではないと思っています。また、本のデータも本当に正しいのか、時には自分でも調べてみる必要があると思います。
targetがあれば、すぐに古びるデータ本が不要になります。

読者の皆様にtarget導入を何度も強く推奨していますが、利用に当たっての向き・不向きについても少し書きます。
当然ながら自分から気になったことを調べようとしなければ、targetは何も応答してくれません。
netkeibaのコラムなどのように、調べなくても相手側から重要なデータを提示してくれる訳ではない、ということです。
調べるのが面倒、という方はあまり向かないかと思いますが、それでも自分の詳しい馬券成績を保存出来る、また券種別、条件別成績もすぐに表示出来る、本命を打った馬の成績もすぐ計算出来る、というだけでお金を払う価値は十分にあるでしょう。
自分の成績を詳しく知ることが、馬券で勝つ第一歩です。

話を戻します。
騎手で重要なのは巧拙よりも、その特徴だと書きました。
分かりやすくて重要なポイントをいくつか挙げておきたいと思います。
これは私も勉強中ですので、仮記事ということにさせていただきます。

 1積極的か消極的か。
 2馬群に入れるか外を回すか。
 3追えるか追えないか。
 4スタートが上手いか下手か。
 5「思考」を使って乗っているかそうでないか。

1積極的か消極的か。

スタートで出していきやすいか、そうでないか、です。

現代競馬は位置取りが重要になってきているため、積極的な騎手は人気馬で信頼に足りやすく、消極的な騎手は基本的に信頼出来ません。

藤岡康太騎手が典型的だと思います。
彼の1番人気での成績は、
【39・32・20・73】で、勝率23.8%・連対率43.3%・複勝率55.5%です。
競馬における1番人気の成績は、集計期間内で勝率32.3%・複勝率63.8%ですから、彼が如何に人気馬を飛ばしているかが分かるでしょう。

下手だと言いたい訳では全くありません。

差し・追い込みの決め打ち系の騎手で、道中、脚を溜めるのが上手いため、そういう馬を買えば良いだけの話です。
重賞で馬券になっている馬もその大半が差し・追い込みでのものになります。
2020年秋華賞では9番人気ソフトフルートで出遅れるや否や、最後方待機策に決めた!というような騎乗っぷりで直線あわやの見せ場を作る3着。
他にもミニーアイルのフィリーズレビュー、サクラアリュールのシリウスステークス、ドゥオーモの函館記念、トーセンカンビーナの阪神大賞典など、待機策で穴を演出しています。

それに対して、消耗戦タイプの先行馬フィアーノロマーノでは、5回騎乗して一度も馬券に絡めていません。
ということは、先行タイプの騎手が向く、と考えられます。

競馬では反対のことを常に考える癖を付けておくと良いと思います。
消耗戦が得意な馬は瞬発戦が苦手、小回りが得意な馬は大箱コースが苦手、というように相反する適性を持っているのだと推測出来るからです。

話を戻します。
実際、フィアーノロマーノは、川田、スミヨン、デムーロらのような追える騎手で結果を出しています。
また、この馬はスタートが悪く、二の脚も遅いのですが、陣営も折り込み済みなのでしょう、スタート後は騎手が必ずリカバリーしようとします。
藤岡康太騎手と川田騎手のリカバリーを見比べてみるとその差が見えてきます。
藤岡康太騎手は函館スプリントステークスとキーンランドカップの二戦で必死に促してリカバリーしようとしますが、これがどうにも上手くいきません。前半に無理に促した分、最後の脚を失ったのではないか、そのように映ります。
川田騎手の方のリカバリーは極めてスムーズです。それほど激しく促すことなく、内の好位を確保しています。
是非、レースを見比べてみてください。
自分に合わないことを無理にすると、上手くいかない典型例のように映ります。

臨機応変な騎乗をするのが一番にもかかわらず、騎手がそれぞれ自分のスタイルを確立するのは、苦手なことを上達させるよりも得意な部分を活かそうとした結果、なのかもしれません。

逃げ・先行する確率はtargetで調べられますし、何なら無料で見られるnetkeibaのデータベースで騎手の戦績を見て判断することも出来ます。
実際のレース映像の前半だけ見ていればおおよそ判断が付きやすいので、注意してさえいれば自然と覚えるものだとも思います。

2内枠得意か外枠得意か。

内を突きやすいか、外を回しやすいか、と換言出来るかもしれません。
大外ぶん回しや内のどん詰まりはファンの怒りを買いやすい。
また、展開にも大きく影響するため、この特徴は是非とも押さえておくべきです。

芝は基本内有利、ダートは外有利、と前に書きましたが、外を回しやすい騎手はダートの方が成績が良くなる傾向にあります。

先述した鮫島良太騎手がまさにそのタイプと言えるでしょう。
集計期間中の芝・ダート別成績、また、外枠での成績を比べてみましょう。


【8・6・6・211】勝率3.4% 連対率6.0% 複勝率8.5%
ダート
【19・20・25・388】勝率4.2% 連対率8.6% 複勝率14.2%
6.7.8枠での成績
【12・12・14・240】勝率4.3% 連対率8.6% 複勝率14.4%

他、藤田菜七子騎手も分かりやすく外を回す騎手です。
馬群を捌く技術に欠けるのでしょう。
欠点ではありますが、自分を理解していて武器を活かしている点では上手いと言えます。
内枠有利の芝で内枠に入っても容赦なく外を回してきますが、分かりやすく外枠の成績が良い。彼女もダートの方が良績を残していますが、特筆すべきはダートでの外枠成績です。

全成績
【105・109・82・1582】勝率5.6%連対率11.4%複勝率15.8%
ダートの6~8枠の成績
【31・36・17・324】勝率7.6%連対率16.4%複勝率20.6%
これがダートの1~5枠になると……
【31・29・20・504】勝率5.3%連対率10.3%複勝率13.7%

これだけ顕著な差が出てくるのです。
彼女は新潟が得意だと有名で、実際にリーディングを取っているように新潟での成績が良いのですが、その理由は、芝・ダートともに外枠が有利になりやすいから、でしょう。
現状、買いどころは明らかです。
女性騎手のため平場では永続的に2キロ減がありますので、それが活きやすい平場の短距離戦、及び、ダートの外枠、芝なら外を回しても不利にならないコースや馬場状態の時、と言えます。

なお、こうしてデータを並べていますが、あくまで成績は騎乗スタイルの結果、付随してくるものだと思ってください。

福永騎手はビッグアーサーでの内どん詰まりの印象があまりに強烈でしたが、基本、内枠が得意な騎手です。
内有利の芝では、内枠なら単勝ベタ買いでも儲かる計算ですし、外有利なダートでも内枠で成績をそう落としません。
先述のサトノウィザードに乗って二度勝利していますが、鮫島良太騎手との騎乗と比べてみると違いがよく分かります。
福永騎手は道中、内でじっくりと溜めて直線で外に出すという差し馬のお手本のような騎乗をしていますが、それとは対照的に、鮫島良太騎手の方は最初から外に意識が向いています。

もっとも、馬の気分を重視するタイプなので消極的に映る場合もまま見受けられます。

2020年の阪神カップでは単勝1.5倍のインディチャンプに乗りましたが、12番と外枠、彼はこの馬で位置を取りにいく競馬をしたことがないので、ポジションを悪くする確率が非常に高いと思いました。
丁度、TAROさんの騎手本を読んで、騎手について学ぼうと思った時期です。
レースでは、スタートは出たものの馬なりの競馬で後方に位置しました。案の定、差し損ねて3着に敗退しました。
私が福永騎手の特徴を理解していないで馬券を買っていたとしたら、憤る騎乗だったでしょう。私は軽視したため、馬連万馬券を的中することが出来ました。

騎手の騎乗スタイルを知ることは馬券に直結します。
自身で研究することはもちろん、TARO氏の『競馬記者では絶対に書けない騎手の取扱説明書』を参考にするのも良いでしょう。
私はまだまだTARO氏の本のお世話になっています。

3追えるか追えないか。

素人目に分かりにくいですが、これを知るにはパトロールビデオで馬を真っ直ぐ走れらせられているかどうかを見ると良い、と聞きます。
馬は基本的に真っ直ぐ走りません。
それはロスが多いという意味とほぼイコールです。
しかしながらパトロールビデオを見て研究するのは多大な労力が必要でしょう。

特定の種牡馬の産駒限定での騎乗成績を見るのも参考になるかと思います。
『競馬記者では絶対に書けない騎手の取扱説明書』には、ディープインパクト産駒とハーツクライ産駒でのリーディング成績だけが特別取り上げられています。
当初、何も気にしていませんでしたが、今、執筆していてよく理解しました。

これはキムラヨウヘイ氏もTwitterでツイートしていますが、ハーツクライ産駒は海外騎手が大の得意としており、反対に日本「的」なトップジョッキーが苦手としています。
キムラヨウヘイ氏は、武豊騎手、福永騎手、横山典騎手らの名前が挙げています。
乗りこなすためにはそれだけ追う能力が必要だということでしょう。

対照的にディープインパクト産駒は、イメージ通り切れ味が身上ですから追う力はそう要らないと考えられます。

レーン騎手はディープインパクト産駒で人気馬を飛ばしまくり、タフなレースが得意な種牡馬の産駒で好成績を挙げています。リスグラシューとのコンビは記憶に新しいでしょう。

この成績差を利用するのです。

私がtargetで調べた両者のリーディング順位は以下の通りです。

ディープインパクト産駒
1 川田将雅
2 クリストフ・ルメール
3 福永祐一
4 ミルコ・デムーロ
5 武豊
6 北村友一
7 戸崎圭太
8 松山弘平
9 石橋脩
10 吉田隼人
11 浜中俊
12 藤岡祐介
13 和田竜二
14 ジョアン・モレイラ
15 三浦皇成
16 松若風馬
17 岩田望来
18 田辺裕信
19 オイシン・マーフィー
20 池添謙一
21 丸山元気
22 ダミアン・レーン
……

続いて、ハーツクライ産駒の成績です。 
1 クリストフ・ルメール
2 川田将雅
3 北村友一
4 三浦皇成
5 ミルコ・デムーロ
6 武豊
7 池添謙一
8 戸崎圭太
9 松山弘平
10 福永祐一
11 松若風馬
12 田辺裕信
13 岩田康誠
14 藤岡祐介
15 吉田隼人
16 藤岡康太
17 大野拓弥
18 丸山元気
19 田中勝春
20 ジョアン・モレイラ
21 鮫島克駿
22 浜中俊
23 津村明秀
24 内田博幸
25 ダミアン・レーン

豪腕ではなく繊細と言われる北村友一騎手が上位になったのは意外ですが、パワータイプの三浦皇成騎手が一気に躍進したように一定の目安にはなると思います。(なお、太字は、私の知識上、パワータイプの騎手になります)

マイネル軍団はキレよりも持久力を活かす消耗戦タイプの馬が多いのですが、そこと相性の良い津村明秀騎手の名前が挙がってきたのも納得です。
地方上がりの岩田康成騎手、内田博幸騎手も納得出来ます。

他にも、勝率や複勝率ベースの集計方法、ディープインパクト産駒側に当たるロードカナロア産駒の成績、マイネル軍団での成績、なども加味してみるとより精度が上がってくるものと思われます。

4スタートが上手いか下手か。

私は競馬新聞は「インターネット馬三郎」を利用しています。

これの利点は、紙の競馬新聞を買うよりも安く済む点がまず一つ。全ての機能を利用出来るプレミアムコースで、月額2724円(税込)です。

「調教速報」という機能では、全馬の調教タイムを見ることが出来ます。そのため、その日のウッドチップの時計が出やすかったか出にくかったかも一目瞭然です。追った時間までは書いておらず、ハロー掛けの前なのか後なのかも分かりませんが、それでも他の競馬新聞よりは有用でしょう。
ちなみにtargetでは、自動計測の坂路調教のみになりますが、追った時間が分かりますし、調教時間の空白がハロー掛けの時間ですので、より詳しく分かります。ウッドチップコースももうすぐ自動計測が始まりますから、targetで全て完結出来る時代もすぐに到来するでしょう。

また、バックナンバー機能が非常に有効です。
過去の新聞を見られる訳ですから、過去走の敗因、馬具の着用、状態、などについての陣営コメントを遡って読めます。
ネット新聞ならではの機能で、今ではもう手放せません。

なぜ、この話をしたかといえば、「インターネット馬三郎」では、騎手の「出遅れ率」を見ることが出来るからです。

インターネット馬三郎を起動→重賞レースを選択→「データ」という項目の一番下に騎手別の出遅れ率の記載あり(重賞のみでしか出てこないデータになります)。

この出遅れ率がどのように算出されているかは定かではありません。
重賞に限るのか、はたまた全レースを集計しているのかも分かりません。
馬柱の「出遅れ」を参考にしているのか、集計期間がいつからいつまでなのか、も分かりません。
しかし、参考にはなるでしょう。
その数値に関しては著作権の問題からここでは書けません。
14日間の無料お試し期間がありますので、気になる方は利用してみては如何でしょうか。そこで全て確認して、targetなどにメモを取っておくだけでも有用だと思います。

スタートが上手いと言われている武豊騎手の出遅れ率が低く、下手だと有名なデムーロ騎手の出遅れ率が高くなっていることから、その信憑性はそう低くないと思われます。

個人がレースを見て調べるには多大な労力が必要ですし、乗る馬の出遅れ癖の有無にもよるところがあって非常に難しいと思います。
一応は客観的なデータの方を提示してくれているのですから、利用しない手はないでしょう。

なお、スタートは「センス」だと言われます。
そうでなければ、ベテランのデムーロ騎手が下手であり続ける訳はありませんよね。

5「思考」を使って乗っているかそうでないか。

2021/7/17(土)の話になりますが、とある方のツイキャスを聞いていました。
そこで「坂井瑠星騎手はよく考えて乗っている」とキャス主が述べていました。
訪れたレースは函館9Rの芝2600m
1枠1番が坂井瑠星騎手のタイセイドリーマー、1枠2番が黛弘人騎手のポーラーサマーという馬でした。
レース映像を見ながら「坂井騎手は内で詰まるのを嫌ってどこかで外に出しますよ。黛騎手は考えていないから内にずっといるはずです」と述べていたのですが、1000m通過付近で坂井騎手は一頭分外に出しました。
対して、黛騎手はずっと内を追走しており、上がっていきたいところで前が詰まっていました。
坂井騎手が7番人気での勝利を挙げた一方で、黛騎手は10番人気で6着でした。結果だけみれば、黛騎手は十分健闘したように見えますが、詰まっていなければもっと着順は上だったように思います。

これこそまさに「思考」を使っているか否かの差、でしょう。
「勝つかどうかは別なんですよ。納得出来る騎乗をしてくれるかどうかの差なんです」とキャス主は述べていましたが、まさにその通りだと思います。納得いく騎乗をしてくれれば、馬券を購入側も外れて悔いなし、ではないでしょうか。

騎手が「思考」を使って乗っているかまで理解出来るのは、相当騎手に注目して見ていなければ無理でしょう。
私はキャス主に到底及びません。
ですが、他人の「思考」を借りることなら私でも出来ますし、誰でも出来ることだと思います。そして、それは決して悪いことではないと思っています。

坂井琉星騎手は競馬観戦が一番の趣味「だそう」です。
ですから、競馬ファン側目線もしっかり持っていて、展開やコース取りも上達するのかもしれません。

福永騎手は勉強熱心で、レース当日の朝、馬場を歩いて伸びどころをチェックしている「そう」です。

池添騎手は、前が詰まらないように垂れないだろう強い馬の後ろに位置する「らしい」です。

大きな落馬で馬群が怖い騎手もいると「聞きます」。

これらは全て聞いた話です。
昔、一度競馬騎手と遭遇したことがありますが、常識外れの行動を取っていました。こう言っては失礼ですが、競馬騎手の中には全く頭を使っていないのではないか、使う頭がないのではないか、と思われる人が少なくありません。
「福永騎手は頭がいい。言語化が出来る」と上手な予想家の口から聞いたことがありますが、失礼な話だなと思いました。競馬関係者の中では「頭がいい」かもしれませんが、世間にはもっと頭の良くて物事を言語化出来る人が普通にいるでしょう。
身体能力の高さをだけを武器に騎手を務めている人は多く、その分、賢さが際立つと言えるでしょう。

騎手の騎乗をよく見れば、そこに大きな差があるときっと発見出来るでしょう。
馬券の予想力にも大きな差が出てくるはずです。
自分にも言い聞かせつもりで発言しています。

本記事はこれで終わりますが、データが足りなくて物足りなく感じる人がいるかもしれません。
本書の目的はそこではなく、自分で「思考」する力を付けることを主目的としています。足りない部分に関しては、是非、自分でレースを見たり、ツールを利用して調べたりしてみてください。

投げ銭のお願い
当ブログでは投げ銭を募っております。
予想の結果、読み物としての内容、が参考になった、気に入った、等ありましたら投げ銭していただけると大変喜びます。もちろん、無料で読んでいただくだけで十分嬉しいことに変わりはありません。
受取人のEメールアドレスに「magumagumagu.com@gmail.com」を入力していただければ、まぐに届きます。15円から可能です。是非、よろしくお願い致します。