『「永遠の初心者を脱する!」ための競馬思考』13 ラップについて(前編) 2.3歳馬のレースのラップの見方

私がレースラップを学ぼうと思ったのは、せいぜい数年前の話になります。
少しずつ覚えていきましたし、まだまだ勉強中です。
詳しくない方も少しずつ覚えていけば良いと思います。

レースラップを学んで、評価が激変した馬が数頭います。
その筆頭格が「砂のサイレンススズカ」の異名をとるスマートファルコンです。
現役当時、3歳時のKBC杯を最後に中央のレースに出て来ず、地方ドサ回りを続けて弱い相手に勝ち続けていた(と思われていた)という理由から、悪い意味で「スマファル師匠」と揶揄されていました。
当時はダートの勝ち時計の価値も、ラップの見方も分かっていませんでした。
エスポワールシチーを9馬身千切った帝王賞のラップは常軌を逸しています。

12.2-11.0-12.0-12.3-12.3-12.6-12.7-12.6-11.3-12.1

入りの3Fは35.2秒、1000m通過が59.8秒、上がり3Fが36.0秒、勝ちタイムが2.01.1となります。入りの3Fは1200mと言われても全く驚かない程速いものですし、1000mを59.8秒で通過しながら上がりを36.0秒でまとめたレースラップは、当時の大井が時計が出やすかったことを考慮に入れても破格としか言いようがありません。

ちなみに芝スタートの阪神ダート2000mのコースレコードは、ワンダースピードの2.01.0ですが、これは不良馬場で出した時計です。
他にスマートファルコンは東京大賞典で2.00.4のスーパーレコードを良馬場で出しており、歴代のダート馬の中でもクロフネに次ぐレベルの強さを持っていたのではないでしょうか。
ラップが分かれば、馬の強さをおおよそ正当に評価することが出来ますし、それは非常に面白く、馬券にも生かせると思います。
もしも、ラップに拒絶反応を示している人がいるなら、まず、肩の力を抜いて楽しんでもらいたいと思います。

2021年の天皇賞(春)で、ある競馬YouTuberの方がその予想動画内で、本命馬ディアスティマの名前を間違って言い続ける、ということがありました。
本命馬のレースを観ていないのだなと思いました(もしかすると、実況音声をミュートにしていたのかもしれません)。
「レースも観ていないのに本命馬を決めるとはどういうことだ!」
と憤る人もいるかもしれません。
ですが、レースを観なくてもディアスティマがどういう馬なのかが分かるくらいラップには情報量が詰め込まれているのだと私は思っています。下手にレースを観るくらいなら、観ないで予想するのも全くあり、でしょう。時間短縮につながります。
ましてや、ディアスティマは逃げ馬です。レースラップがそのままディアスティマの刻んだラップなのですから十分当てになるでしょう。

「下手にレースを観るくらいなら、観ないで予想するのも全くあり」と書きましたが、レースは観るに越したことはありません。不利や距離ロス、馬場の伸びどころ、等が確認出来ますから。しかし、レースを観ると一頭の馬の不利を過剰に評価してしまう場合があります。
私の場合、2019年のマイルカップがそれに当たります。
このレースの私の本命グルーヴィットは、伸びかけたところで前が詰まり、まともに追えないまま10着でしたが、当時、「あの不利がなければ3着は十分にあった!」と憤りました。ですが、このレースは他の馬も多数不利を受けていたのです。ダノンチェイサーは進路を妨害されて降着の事例が発生しましたし、何なら不利を与えた側のグランアレグリアも進路がなくなったため強引にこじ開けてしまったので、スムーズだったらもう少し上位に来ていたでしょう。
このように不利は他馬の不利も確認して判断するのがベストのため、なかなか難しくなってくるのです。

また「レースラップは意味がない。各馬の個別ラップを見なければ意味がない」と主張する方もいます。
尤もだとは思うのですが、レースラップだけでもアバウトにレース質を判断することは出来ます。個別ラップを知るにはかなりの労力が必要でしょう。時間のある人にしか出来ません。本稿では、レースラップはアバウトで良い、というスタンスで進めていこうと思います。ただし、大逃げがあった場合は除きます。流石に参考になりにくいですから。
個別ラップを調べる意欲ある方は是非調べてみてください。きっと素晴らしい発見が出来ると思います。

では、本題に入ります。
レースラップと一口に言っても、判断材料はいくつもあります。
2歳・3歳戦についてまず語ってみましょう。

新馬戦はスローペースになりやすく、走破時計も遅くなりがちです。
こうした馬が次走、昇級して重賞で通用するかどうかの目安の一つは、ラスト2Fの時計です。

札幌2歳ステークスは前半ハイペースになり、後半は持久力勝負になるのが例年の傾向ですが、2021年もその例に漏れませんでした。函館2歳ステークスにも言えるのですが、どちらもハイペースになりやすいため、前走で逃げ切った馬は不利に働きやすい。
ですから、逃げて勝ち上がった2番人気トップキャスト、3番人気リューベックは疑いの目で見るのが正解だと思います。また、ハイペースで外差し有利になりますので、1番枠、2番枠、というのも危険材料となります。

では、1番人気のジオグリフの新馬戦はどうだったか?
新馬戦は東京芝1800m。そのラスト2Fは11.0-11.3でした。

『新ラップタイム重賞図鑑』夏目耕四郎著、では「新馬戦はスローになりやすく、残った余力がラスト2Fに表れやすい」と書かれてあります。
そこでの目安は「勝ち上がったレースのラスト2ハロンが23秒5以内」か「ラスト2ハロンが11秒5→11秒5以内」で、かつ、そのレースを上がり最速で勝っていれば完璧だとも書かれてあります。

しかし、私としてはこの基準は甘い、と感じています。馬場状態にもよりますが、ラスト2ハロン22.5秒くらいは欲しい。11.5秒→11.5秒という基準も、11.4秒→11.4秒くらいは必要だと思います。これをクリアしていれば重賞級の可能性が高い(ちなみに、2020年の札幌新馬戦を勝ったバスラットレオンは、11.0-11.2と非常に速く、この時点で重賞級だと分かりました)

ジオグリフはクリアしていますね。
対して、トップキャストは好タイムの逃げ切り勝ちでしたが、道中流れたのもあり、11.7秒→13.0秒、と非常にかかっていました。
リューベックは、11.6秒→11.6秒、で、時計のかかり始めていた函館にしては速い。しかし逃げ切り勝ちだったので私は軽視しました。

結果はジオグリフの大楽勝でした。
新馬戦は、ラスト2ハロンを見ることを覚えておくと良いでしょう。

また、ジオグリフにはもう一点、評価出来るポイントがありました。
それは、新馬戦の上がり4ハロンの時計です。
東京芝1800mでレースの上がり4ハロンが、45.3秒だったのですが、これが極めて速い。上がり3ハロンが速いだけなら、スローからの瞬発戦で、ある程度強ければこなせます。が、上がり4ハロンを好タイムで走るにはかなりの持久力とポテンシャルが必要となります。

実は、東京芝1800mでラスト4ハロンを好時計で走った馬は、将来が約束されているようなものなのです。具体例を挙げていましょう。

コントレイルの東スポ杯2歳ステークス:45.7秒
クロノジェネシスのアイビーステークス:45.7秒
ダノンキングリーの共同通信杯:45.3秒
カレンブーケドールのスイートピーステークス:45.3秒

コントレイルとダノンキングリーは当時からすでに高い評価を得ていましたが、クロノジェネシスは牝馬の中では強い、程度の評価だったでしょう。
カレンブーケドールに至っては、次走、オークスで大穴をあけたように全く人気になっていませんでした。

次に、2021年共同通信杯を見てみましょう。

このレースは上がりの幅の非常に狭いレースで、1~7着馬の上がり3ハロンが33.3秒~33.6秒の間に収まりました。こうなるのは当然、スローペースで多くの馬が脚を余しているからで、時計的にも凡戦。一見するとスローの上がり勝負で評価出来るレースではありません。
が、このレースは上がり4ハロンが非常に速かったのです。

そのタイムは、コントレイル・クロノジェネシスと同じ45.7秒でした。
ですから、このレースは一見、低レベル戦に見えて、よく見ればハイレベル戦だったのです。私はこの時、上がり4ハロン目安を知らず、皐月賞でこの組を軽視してしまいました。
上位馬のその後の成績は優秀で、世代屈指のハイレベル戦だったと言えるでしょう。

1着エフフォーリア:皐月賞1着、ダービー2着
2着ヴィクティファルス:スプリングステークス1着
3着シャフリヤール;毎日杯1着、ダービー1着
4着キングストンボーイ:青葉賞2着(ハナ差)
5着ステラヴェローチェ:皐月賞3着、ダービー3着
6着カイザーノヴァ:その後、骨折休養で未出走
7着プラチナトレジャー:1勝クラス1着、2勝クラス2着

この中でも注目は、出遅れて後方から上がり最速を使ったキングストンボーイでしょう。青葉賞こそ負けてしまいましたが、共同通信杯で1番優秀なレースをしていたので、出世する可能性が高いと見ています(※神戸新聞杯を予定しています)。
ヴィクティファルスも、皐月賞・ダービーでは結果が出ませんでしたが、ハーツクライ産駒らしく今後成長してくれば、G1を勝てるまで出世するかもしれません(※セントライト記念に出走予定です)。
カイザーノヴァは復帰戦は2勝クラスからになる模様で人気になるでしょうが、ある程度、上のクラスまではいけるはずでしょう。

また、ラップとは違いますが、走破時計が速い場合(厳密には、馬場差込みのスピード指数が高い場合)、2、3歳馬は信頼に足ります。
そもそも、スローになりやすい2.3歳世代限定戦では持ち時計(持ち指数)のない馬が多数出てきて人気にもなりますが、高いスピード指数で走破していればそれだけ高い能力をすでに見せていることから信頼しやすい、時計勝負になって凡走する危険性が比較的少ない、という訳です。

少し古めの話になりますが、アルアインの勝った2017年皐月賞はそれまでの持ち指数上位馬が6着までを占めるレースになりました。一方、指数の低い人気馬がことごとく飛んだレースでもあります。高い指数を持っていて飛んだのはサトノアレスだけでした。
実は元々、皐月賞はスピード指数が活きやすいレースです。スローになりやすいトライアルとは打って変わってペースが上がり、速い時計も必要になるからでしょう。また、若駒でまだ距離適性が定まっていないこと、ペースが上がって追走力が要求されることから、距離延長もさほどマイナスに働きません。つまり、マイルのスピード指数も有効になる場合が多いのです。これは、2200mのすみれステークスからの距離短縮組が皐月賞で全く馬券に絡んでこないのを考えれば分かるかと思います。

Victory Road 2017/4/16の先週の結果分析
「先週の結果分析」における指数のTARGETのデータを無料配布しているブログです。TARGETに他の基準タイムデータを入れていない方は利用してみては如何でしょうか。

(※2020年12月にこのブログの運営者様とコンタクトを取ってみたところ、本書での紹介を快諾していただけました。また、グリーンチャンネルのスピード指数を載せていることから、ブログは「グレーゾーン」という認識でした。ただ、競馬界で顔の知られた方のようで、「先週の結果分析」元出演者と打ち合わせの際にブログの運営者であることと打ち明けたこと、「先週の結果分析」番組内でも大川さんが「注目馬の次走出走はネットの一覧等ご覧になって…」という趣旨のコメントをした事があったそうで、グリーンチャンネル側には黙認いただいている状況だと思う、という話でした)

1着アルアイン 毎日杯1着 1.46.5 指数104(ペース補正-0.6秒)
2着ペルシアンナイト アーリントンカップ1着 1.34.1 指数101
3着ダンビュライト サウジアラビアロイヤルカップ2着 1.34.7 指数100 
4着クリンチャー すみれステークス1着 2.14.1 指数97
5着レイデオロ ホープフルステークス1着 2.01.3 指数105
6着スワーヴリチャード 東京スポーツ杯2歳ステークス 1.48.3 指数101(ペース補正-0.5秒)
以下は低い指数で飛んだ馬になります。
7着ファンディーナ フラワーカップ 1.48.7 指数95(ペース補正-0.5秒)
8着ウインブライト スプリングステークス 1.48.4 指数93
9着カデナ 京都2歳ステークス 2.02.6 指数95(ペース補正-1.1秒)
……
11着サトノアレス 朝日杯フューチュリティステークス1着 1.35.4 指数99(ペース補正-0.3秒)

※0.1秒で指数1の価値があります。
※ペース補正とは、主にスローペースの際に「ペースが流れればもう少し時計は出ただろう」と想定して指数を上積みする補正のことです。

なお、キムラヨウヘイ氏が「先週の結果分析」のタイムランクでは勝てない、という趣旨の記事を書いています。

「説得力があっても・それが正解だとしても、まず誰もが分かる話・誰もが知り得る話には価値が無い」と主張しており、尤もな話だと思います。
しかし、スピード指数が「誰もが分かる話」「誰もが知り得る話」に、なっていない読者の方には有用だと思います。
競走馬の能力を測る目安として当たり前となっているスピード指数は、手元に持っておいて損はありません。他に強力な予想の武器を持っている方なら不要かもしれませんが、そうでない方は、是非、スピード指数を当たり前にしておいてほしいと思います。

本稿は以上。
もう少し内容を充実させたいと思っていますので、ラップで見るべきポイントが分かれば、追記していきたいと思っています。
次回は、2019年の重賞のラップを取り上げて、コース別の基本的なラップ、イレギュラーなラップ、を紹介・解説していきたいと思います。

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