『「永遠の初心者を脱する!」ための競馬思考』17 距離延長馬でも比較的、走れるコースについて1

6では「距離短縮の優位性」について書きました。
今回は「では、距離延長で有利なコースは?」という疑問が沸いたため、調べてみました。
調べる前に、距離延長が有利なコースの特徴を考えてみました。

1:スローペースで流れやすい芝のコース
2:スタミナよりも追走力が必要なコース

おそらくはこの2つのどちらか当てはまるだろうと思っていましたが、結果は概ねその通りになりました。
結論から書きたいと思います。

距離延長でも走りやすいコース一覧

 芝コース
・東京芝1800m
・東京芝2000m
・阪神芝2000m
・新潟芝1200m
・中京芝1600m
 ダートコース
・東京ダート1300m
・新潟ダート1200m(福島ダート1150mからの延長に限れば、延長の方が短縮全体よりも成績が良いレベル)
・新潟ダート1800m(トータルでは短縮よりも延長ローテの方が成績が良い。1700mからの延長が最も優秀で、次点に1600m)
・福島ダート1150m(1000mからの延長馬の勝率はやや低いのですが、複勝率に限れば、短縮ローテと互角)

※今後、詳細なデータを挙げていきたいと思いますが、気をつけていただきたいのは、同距離ローテが最も成績が良くなって当然という点になります。
延長組と短縮組には、様々な距離と芝・ダートが入り混じっていますし、陣営が「ちょっと別距離を試してみよう」程度で使ってくる場合もあります。
また、新潟ダート1800mのところで「トータルでは短縮よりも延長ローテの方が成績が良い」と書きましたが、2000mからの距離短縮の複勝率は1600mより良いと出ています。あくまでトータルでの成績になりますから、ご注意ください。
なお、集計期間は2019~2021の三年間の全レースになります。
そのため、現在改修中の京都に関しては調べていません。

東京1800m

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©うまのいらすと

同距離 勝率10.1% 連対率18.6% 複勝率36.9% 単勝回収率54 複勝回収率66
延長  勝率5.4% 連対率12.4% 複勝率20.0% 単勝回収率87 複勝回収率68
短縮  勝率7.7% 連対率15.5% 複勝率23.6% 単勝回収率107 複勝回収率73

今回挙げたコースの中では比較的、延長有利とは言えませんが、あまりに狭める必要はないと思って載せました。
東京芝1800mは「内枠・先行有利」と言われるコースです(ただし、逃げ馬は勝ちきれないことが多いコースです)。
その理由ですが、コース図を見てお分かりの通り、2コーナーの引き込み戦からスタートして緩やかに曲がりながら向正面に入っていきます。
そのため、隊列がすぐに決まってペースが緩みやすいのです。

重賞は、共同通信杯、エプソムカップ、毎日王冠、アイルランドトロフィー府中牝馬ステークス、東京スポーツ杯2歳ステークス、が開催されます。
執筆時点(2022/6/21)で直近の重賞を振り返りながら、今回のテーマと関係することについて語っていこうと思います。

2022 エプソムカップ

このレースは距離延長馬が1-3人気を占めましたが、わたくしは距離短縮有利と判断しました。その理由は、直前のスコールによって重馬場まで悪化したからです。実際、距離短縮馬のノースブリッジとガロアクリークがワンツーフィニッシュを決めました。3着に距離延長の2番人気ダーリントンホールが食い込みました。
ここで言いたいのは、距離延長・距離短縮を決めるには馬場状態が重要、ということです。馬場が悪化すればスタミナが必要になるため、距離短縮組が有利になります。ダートも同様です。雨が降って時計が出るようになれば、距離延長馬が走りやすくなると言えます。
また、このレースは内空け馬場、つまり、直線で全馬内を空けるようなレースで行われました。
こういう馬場の場合、基本的には好きに進路を選べる先行馬が有利に働きやすい、と言えます。差し馬は馬場の良いところから更に外を回さなければならないからです。
おそらく、上記の二点の理由から距離短縮の先行馬ノースブリッジを本命にした人も少なからずいると思います。
レースは、トーラスジェミニが主張、内にコルテジア、外のノースブリッジも主張しましたが、2コーナーを回る時にはすぐ控えました。これで隊列はすぐに決まり、緩めの流れに。最後方から上がり最速を使った1番人気ジャスティンカフェは4着まででした。

2022 共同通信杯

スタートを出てからはビーアストニッシドが主張するだけで、他馬はどれも行きたくないといった様子。これですんなり隊列は決まり、前半1000m61.1秒というかなりのスローペースに。
戦前は決め手勝負になると見ていましたが、このレースも直前に雨が降ってやや重まで悪化。わたくしは、東京の馬場ならやや重程度では距離短縮有利と簡単には判断しません。
勝ったダノンベルーガは2000mの新馬戦を使って距離短縮でしたが、皐月賞とダービーで共に4着と、東京では地力が違ったと言えるでしょう。
2着ジオグリフは、前走・朝日杯では追走負けして5着敗退。距離延長で追走が楽になった分、すんなり2着は確保出来ました。
3着ビーアストニッシドは、前走・シンザン記念で追走負けして逃げられずの4着。こちらも距離延長が功を奏したタイプで、すんなり逃げられたからこその3着でしょう。やや重だったのも味方したと言えます。
距離延長の優位性として、位置を取りやすくなることが挙げられます。

2021 東京スポーツ杯2歳ステークス

そもそも距離延長馬が一頭しかいないレース。その距離延長馬も4戦してようやく勝ち上がったナバロンです。ここは距離短縮か同距離ローテかの選択しかありません。
スタートは2番枠テンダンスが速く出たものの、ナバロンが主張。デリカテスが二番手で、これも2コーナー付近で隊列がすんなり決まりました。
このまま行くかと思われましたが、出遅れたアルナシームが引っかかり、2番手まで上がっていきました。ナバロンが譲らず、アルナシームが追いかける形で3コーナーに入る形に。
もう一点注目したいのが、3番枠のアサヒと1番枠イクイノックスが最内を通ってじわじわ前との位置を詰めた点になります。
というのも、このレースは前半1000mが60.3秒とスローペースでしたが、後半の4ハロンが45.9秒とかなり速い時計が出たのです。
後半がここまで速くなると、道中でロスなく回った馬が有利になります。
外枠有利になりやすいダートでも、なのですが、速い時計の決着で上位に来るためには、道中、ロスを極力少なくする必要性が出てきます。もしくは、単純に力が抜けているか。
このレースは結局、1番枠イクイノックスが1着、3番枠アサヒが2着、2番枠テンダンスが3着と、内枠決着になりましたが、この三頭はいずれも直線に入るギリギリまで最内を確保していた三頭になります。
イクイノックスは皐月賞・ダービーで2着する実力馬だったので力が違いすぎた、と言えます。
アサヒは大きく出遅れた共同通信杯の5着はともかく、スプリングステークスと白百合ステークスは見せ場なく惨敗。
テンダンスは超スローのつばき賞を逃げ切っただけで、他は人気に応えられずにいます。
4着ダンテスヴュー、5着レッドベルアームもその後微妙な成績なので確信は出来ませんが、イクイノックスを除く上位争いは、東京芝1800mの内枠有利を体現したレースのように思います。

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©うまのいらすと

同距離 勝率10.1% 連対率20.6% 複勝率31.3% 単勝回収率80 複勝回収率75
延長  勝率7.6% 連対率15.3% 複勝率23.1% 単勝回収率76 複勝回収率65
短縮  勝率9.2% 連対率16.8% 複勝率24.3% 単勝回収率73 複勝回収率71

東京芝2000mは東京芝1800mよりも延長馬の好走率が上がっています。
このコースも東京芝1800mと理屈はほぼ同じになります。
2コーナー奥の引き込み線からスタートしてすぐに最初のコーナーを迎えます。馬はコーナーでスピードを落とすため、こちらも隊列は速く決まりやすいと言えます。
上級条件や重賞にもなるとペースが上がって差しも決まりやすくなりますが、基本はスローペースで流れて先行有利になります。
重賞は、フローラステークスと天皇賞(秋)。
こちらも直近の重賞を振り返りながら、重要なことがあれば話していきます。

2022 フローラステークス

わたくしはこのレース、勝ったエリカヴィータと2着パーソナルハイのダブル本命で的中しました。
普段しないダブル本命にどうしてしたかといえば、二頭とも前走で出遅れていて信頼しきれない、でもどちらかは来るだろう、と判断してのことです。

ノーザンファーム産の若駒は、休ませている間に牧場で鍛えて、強くなって戻ってくるというのが基本構図です。
ノーザンファーム産のエリカヴィータは、加えて「牝馬の国枝厩舎」という強い武器がありました。牧場との連携が上手くいっていて、比較的、休み明けから仕上がりやすい牝馬と相性が良く作用しているのかもしれません。
前走のフェアリーステークスは、出遅れた上に、4角で不利がありました。また、鞍上のルメール騎手もまともに追っているようには見えませんでした。
新馬戦はラスト3ハロン11.6-11.5-11.4という加速ラップを差し切っているのですから、素質は秘めている、と判断。
有利な内枠。そしてここはオークス出走のためには落とせないトライアルということで、位置を取りに行く可能性が高いとも判断しました。
パーソナルハイは出遅れた桜花賞で直線も不利がありながら6着。
前々走のフラワーカップも出遅れていました。

このレースは距離延長馬有利、と確信していました。
というのも、例年、このレースはスローで流れやすく、位置を取るに距離延長馬の方が優位に立てるからです。
また、同距離ローテや距離短縮馬に人気馬不在というのもありました。
前後半が60.2-60.2のイーヴンペースとまずまず流れた方ですが、これは逃げたパーソナルハイと2番手のシンシアウィッシュが後ろを引き離したからで、3番手以下はスロー。
それでもパーソナルハイとシンシアウィッシュが2.3着と、前々での決着に。
エリカヴィータは予想通り位置を取りに行ってくれましたが、内で狭くなるところがあっても怯まず譲らなかった精神力も持ち合わせていました。

2019 天皇賞(秋)

恐縮ですが、的中した天皇賞(秋)から。
アーモンドアイ-ダノンプレミムーアエロリット、で決まったレースになります。
本命はダノンプレミアムでした。
ダノンプレミアムはそれまでの戦績から、スローペースを先行して押し切るタイプと認識していました。
前走・安田記念はスタートで大きな不利があり、後方のまま惨敗でした。
しかし、例年ペースが速くなりやすい安田記念向きではないと思っていて、ペースの緩みやすいマイルチャンピオンシップでこその馬だろうと思っていました。
今回の天皇賞(秋)でペースが緩むかの予想ですが、前走の毎日王冠を速いペースで飛ばしたアエロリットの単騎逃げ濃厚のメンバー。アエロリットは流石に距離を考えてペースを落とすだろうと読みました。
と考えれば、前の馬から。
安田記念で相当な不利がありながら3着に追い込んだアーモンドアイはほぼ飛ばないと見て、三連複はアーモンドアイとダノンプレミアムの二頭軸で4頭に流して的中しました。
キモは6番人気のアエロリットを残したことでしょう。
何故、距離に不安のあるアエロリットを残したかといえば、クロフネ産駒は距離延長をこなす、と知っていたからです。
書きながら本当なのか疑問になったため、2022/6/21時点のクロフネ産駒の全成績を集計してみました。

クロフネ産駒成績
同距離 勝率9.7% 連対率18.3% 複勝率26.6% 単勝回収率66 複勝回収率71
今回延長 勝率7.6% 連対率14.7% 複勝率21.9% 単勝回収率70 複勝回収率68
今回短縮 勝率8.1% 連対率15.9% 複勝率23.3% 単勝回収率70 複勝回収率74

延長と短縮と複勝率が1.4%しか違わないのであれば、こなすタイプと判断して良いでしょう。
アエロリットはこれまでに2000mの経験は秋華賞しかありませんでしたが、当時の秋華賞はかなりのハイペースで差し決着の競馬でした。
当時はまだ東京芝2000mは延長でも走れるとは知りませんでしたが、クロフネ産駒という点と秋華賞の負けはノーカンと考えて馬券に残しました。
三連複の配当は3210円でしたが、4点購入で、サートゥルナーリアのところだけ厚めに購入したいたため、5点購入とほぼ同じ。十分な配当を頂きました。
ここで伝えたいことは、距離延長を得意とする種牡馬、苦にしない種牡馬、苦にする種牡馬、と分かれることです。

延長が得意な種牡馬として有名なのがハーツクライだと思います。
2022/6/21現在のハーツクライ産駒の成績を集計しました。

ハーツクライ産駒成績
同距離 勝率10.0% 連対率19.2% 複勝率29.0% 単勝回収率67 複勝回収率73
今回延長 勝率8.3% 連対率17.0% 複勝率24.5% 単勝回収率74 複勝回収率75
今回短縮 勝率8.4% 連対率17.3% 複勝率25.6% 単勝回収率79 複勝回収率81

延長得意と有名なハーツクライ産駒でも短縮の方が優勢になります。

対して、延長が苦手と言われているダイワメジャー産駒の成績を集計しました。

ダイワメジャー産駒成績
同距離 勝率9.4% 連対率19.1% 複勝率28.4% 単勝回収率73 複勝回収率78
今回延長 勝率6.2% 連対率13.0% 複勝率19.2% 単勝回収率76 複勝回収率68
今回短縮 勝率8.3% 連対率16.7% 複勝率24.0% 単勝回収率76 複勝回収率78

勝率で2.1%、連対率で3.7%、複勝率4.8%と、短縮に比べて大きく成績を落としているのが分かります。

最近では、エピファネイア産駒の距離延長が得意なのは知られていると思います。

エピファネイア産駒成績
同距離 勝率9.6% 連対率20.0% 複勝率29.6% 単勝回収率62 複勝回収率71
今回延長 勝率7.9% 連対率16.4% 複勝率24.6% 単勝回収率115 複勝回収率73
今回短縮 勝率7.0% 連対率13.7% 複勝率18.6% 単勝回収率64 複勝回収率54

まだ種牡馬生活が短いとはいえ、延長の方が短縮より上とは驚きです。
単勝回収率の高さに、二重の驚きです。


対して、同じシーザリオ産駒のリオンディーズは延長が苦手と対照的な結果となっています。距離短縮で朝日杯勝利、距離延長のクラシックで敗退という現役時代の成績と同じですね。

リオンディーズ産駒成績
同距離 勝率10.0% 連対率22.3% 複勝率30.6% 単勝回収率60 複勝回収率71
今回延長 勝率6.0% 連対率11.7% 複勝率16.9% 単勝回収率47 複勝回収率46
今回短縮 勝率10.3% 連対率17.3% 複勝率26.9% 単勝回収率102 複勝回収率70

おそらくリオンディーズ産駒に関してはまだ知られていませんので、短縮狙いが有効だと思います。

では、本記事はここまでと致します。
あまりに長くなりすぎましたので、次回以降の距離に関しては手短に済ませます。