『競走馬の科学―速い馬とはこういう馬だ』JRA競走馬総合研究所(著)


競馬主催者が研究所を有しているケースは非常に稀らしい。
何かと批判にさらされることの多いJRA、特に高速馬場に関しては関係者・ファンからの批判をよく目にする。
しかしながら、彼らは相当に研究を費やしている。
どういう馬場が安全かについても詳しく書いてある。
一言でいえば「均一性」が重要だという。馬は馬場が硬ければ硬いなりの走りをするし、その逆も然りである。これから脚を着こうとする場所の状態が、競走馬の予想通りであれば、危険はさほど高くないそうだ。
その予測がつかないのが「均一性」のない馬場だから危険らしい。

水はけや芝・ダートの構造、素材などについても書かれてある。
詳しくは是非、本書に目を通してもらいたい。

面白い箇所はもっともっと沢山ある。

馬の歩法ギャロップは最速の歩法であること。
また、ギャロップは後輪駆動であり、ハンドルである前脚で着地する形になるから怪我の大半が前脚になるらしい。読むまで気にしたこともなかった。読んでからは、どこの脚を怪我したのかを気にするようになった。やはり体感的にもほとんど前脚である。

有酸素運動と無酸素運動の割合。
限りある無酸素エネルギーをレース終盤までいかに温存して、体内に乳酸をためすぎないよう走るかがペース配分の鍵であり、実例としてジャパンカップが挙げられている(ミスターシービー、ハギノカムイオー、ホーリックス)。
人間でもマラソンランナーは一定のペースで走るのが最速への道と言われているから、結びつけて考えることができて面白い。

他。
手前、筋繊維、骨格、馬にとって大切な蹄、蹄鉄、心臓、馬具、ハミの役割、ウォーミングアップとクールダウン、表情、疲労回復、怪我、種付け、母子の生活、血統、競走馬の歴史、など、何から何まで書かれているという印象。

読めば、間違いなく競走馬の見方が変わってくる。
文句なしにオススメできる一冊。