この本ほど厩舎について詳しいデータを載せている本はない(筆者の知る限り)。
騎手と厩舎のどちらが大事かは判断し難い。しかし騎手人気というものはあるが、厩舎はそこまで人気に反映されない。回収率ベースで見れば、厩舎を知っておいた方が得するかもしれない。
2019年のリーディングトレーナー順に、まず全部で186の厩舎の特徴を解説(これは東西の全厩舎!)。
続いて、レーダーチャートで厩舎の特徴を表現している。
このレーダーチャートは、好走率(10番人気以下は除外。そのため、下位厩舎でも高くなる場合がある)、信頼度(上位人気での信頼度)、休み明け(主に中9~20週の休み明けを対象)、回収率(10番人気以下は除外)、激走度(4~7番人気での好走率・回収率を評価したもの)、クセ項目(各厩舎の特徴的なデータ項目を記載)、からなる。
たとえば、堀厩舎なら、18年に重賞未勝利に終わり、連続重賞勝利が12年でストップしたこと。
その理由として、ノーザンファームの理想とする育成方針にそぐわなくなったこと、ノーザンファーム天栄の勢いにやられたこと、を挙げている(堀厩舎は美浦にもかかわらずノーザンファームしがらきを外厩として使っている)。
納得である。
また、休み明けの判断にもかなり役立つ。
「矢作厩舎の休み明けは走らない」というのは有名だが、もちろん、しっかり書いてある。鮫島厩舎の欄にも休み明けは走らないと書いてあり、これは知らない知識だったので勉強になった。文章でなくても、これらはレーダーチャートで一目瞭然である。
他にも、厩舎側のコメントの特徴なり、勝負をかけてきた時の騎手なり、新馬戦での仕上げなり、各厩舎ごとの特色を見事に表現している。
上位65位の厩舎までは細かく文章やデータが載っている(新馬戦成績と重賞成績は必ず載っている)。下位でも、芝ダート別の成績は記載されている。
個人的には調教を重視しているので、厩舎の役割は大きいと見ている。
筆者がそう確信した出来事を綴ってみようと思う。
2019年春の桜花賞とオークスで筆者はエールヴォアを本命にした。桜花賞は逃げ宣言が出ながらも行き脚付かず後方から7着。オークスは調教好時計ながらも直線早々に失速。11着。
元々オークス向きと言われていた馬。
オークスはハイペースだったにしても脱落が速すぎた。
調教のやりすぎ、という声をネットで聞いた。
最終追い切りと一週前追い切りは好時計。二週前では猛時計を出していた。
おそらく、早々の失速は馬が疲れていたのだろう。
今まで、調教時計は速い方が基本的には良いと思っていたから、反省させられた出来事である。
結局、エールヴォアは秋に故障で引退。
橋口慎介厩舎だったが、その重賞成績を見れば本命にすべきでないと分かる。
執筆している2019年11月15日現在で重賞は1-3-2-56。
この中で来ているのは、エールヴォア以外は全て定年した父から受け継いだ馬である。
セントライト記念でも、オセアグレイトを本命にしようと思ったが、管理する菊川正達厩舎が重賞実績に乏しいために止めた(鞍上の野中悠太郎も)。正解だった。
やはり、重賞での仕上げ方を分かっている厩舎とそうでない厩舎の差は大きい。
本命は実績のある厩舎にした方が無難だと思う。実績のない厩舎は相手までで十分だろう。
厩舎を重視している人いない人も、今後の厩舎の見方に役立つだろう。
最後に本書の欠点も。
それは調教師の名前の索引がないこと。
手間がかかるが、自分で索引を作った方が困った時にすぐ見やすいかもしれない。来年度版には改善されているのを期待する。
前作よりは格段に利用価値が増した。
前作は各厩舎の芝ダート別成績や「馬主」「騎手」「生産者」「距離」別の成績、ABCD評価の漠然とした「クセ強度」などがメインで、馬券にどう活かせば良いのかさっぱり分からなかった。
今回は前回の欠点を完全に修正してきた。
良い本は人に勧めたくなるが、これは皆の盲点を突いた良書なので「あまり勧めたくないな」とまで感じさせられる一冊。
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