『馬場を読んで馬券で勝つ方法』馬場虎太郎(著)

 トラックバイアス予想の重鎮、馬場虎太郎の本。
 Amazonのレビューでは評価が散々。「著者の主観で馬場読みをしているから真似できない」という。
 もっともではあるが、自分で馬場のことを考えようとするのならば、十分に役立つ本だと感じた。

 ちなみに筆者はすでに役立っている。

 冒頭に2019年のNHKマイルカップが成功例として紹介されている。
 著者はこのレースを外差し馬場になると前日に予想したのである(前日である! ちなみに彼のウマい馬券を購入していたからかなり驚いた)。
 結果、17番アドマイヤマーズが勝ち、18番ケイデンスコールが2着。3着も外目の10カテドラルが入り、著者は3連複97390円を的中。

 状況を書いてみる。
 前日に雹が降り、10レース以降のレースが中止。当日は条件戦以前のレースは先行馬がコンスタントに絡んでいた(9レースは外差し決着)。

 何故、著者が外差しになると分かったかといえば、まず、東京競馬場はラチ沿いが低く、馬場の真ん中が高い作りになっているそうだ。
 そのため、雨が降ったあとは日が当たりやすい馬場の真ん中辺りから乾くらしい(内枠はまだ乾かない)。
 だから外差しになると予想したという。
(一昔前の知識だと、内側から乾くというのが定説だっただろう。未だにそう思い込んでいる人が多いという)

 筆者がすでに役立っているというのは、2019年の富士ステークスが見事に同様の馬場になったからだ。
 当日はメインレースより前のレースではかなり内を通った馬が残っていた。が、9レースでやや外差し傾向が見えてきた。これならメインでも馬場の真ん中が乾いて外有利になると見た。
 結果、想像以上の外差し馬場になり、大外を回ったノームコアが1着、それに付いていったレイエンダが2着。
 筆者がnoteに書いた予想でもこの本を参考に外差しになると予想している。
 noteに書いた予想はこちらから。(馬券は外れているが……)

 馬券の考え方についても十分に役立つ。
 未来の馬場読みができなくても過去の馬場読みができていれば勝てる、と著者はいう。


 それはすでに馬券に活かしている。
 先週のマイルチャンピオンシップ(2019)は超スローで、四角で外々を通った馬が全滅になった。これらの馬は次走で人気を落とすだろうから狙えば良いだけだろう。特にクリノガウディーは三戦連続で不利や馬場不向きだから、次走も狙いたい。
 著者も述べているが、一頭一頭見ると大変な割に労力が報われない(不利を受けた馬はオッズに反映されやすい)。レースごとに見れば良いという。不利な馬場を通った馬を見つけるだけなら時間もかからない。

 競馬場毎の馬場の特徴も書いてあり、参考にはなる。が、これはそれ以上に今後、自分が見ていく中でどこをどう見れば良いのかの参考になる。京都は来年から馬場改修でレースが行われないので、人任せにはなかなかできない。自力で見ていく力を養う必要がある。

 著者は自分でトラックバイアス判定を行っているし、馬場造園課長が誰かまで気にしているそうだ。こういうのを「自慢」と受け取るレビューも見受けられたが、これは自力で馬場読みを頑張れ、というメッセージなのだと筆者は受け取っている。

 馬券にすぐ直結するデータを求めている人には向かない本だが、利用方法によっては十分に役立つ本だと思う。