人の癖から考える競走馬

競走馬は人に所有・管理されている以上、人の癖が特徴に影響を及ぼすと考えています。
馬主・厩舎・生産牧場など……。

まずは一例として馬主について触れてみたいと思います。
その昔、アドマイヤ軍団の近藤利一氏は「瞬発戦型」、前妻の近藤英子氏は「持続戦型」の馬を所有していることが多いと感じていました。
たとえば、近藤利一氏は、アドマイヤベガ、アドマイヤムーン、アドマイヤグルーヴ、アドマイヤマーズ、アドマイヤリード……、など。
近藤英子氏は、リンカーン、ヴィクトリー、アリストテレス……、意見は分かれそうですが、アドミラブルも持続力型だと考えています(グレースアドマイヤ牝系を所有している面が大きいと考えています)。

「コパノ」冠名でお馴染みの小林祥晃氏(Dr.コパさん)は、社台グループが力を入れていないダート馬を中心に所有していると公言しています。
「スマート」冠名の大川徹氏の所有馬は、スマートファルコンを筆頭に逃げ馬が多いと感じたことはないでしょうか。
TARGETで2014年まで遡って検索してみました。逃げた馬は延べ188頭で、全出走回数は1520回。逃げ率12.4%は、大半の減量騎手の逃げ率を超えている水準です。
今、大注目は、サイバーエージェント社長の藤田晋氏でしょう。
全所有馬の複勝回収率は驚きの97%!
まだ出走回数が少ないのもありますが、高額馬を中心に所有していて人気になるにもかかわらず、この数字は破格です。

やはり「人の癖」が競走馬に表れると考えるのは一理ありそうです。

もう少し馬を直接管理するところで厩舎の影響を考えてみたいと思います。
私は昔、「同じ厩舎と言っても馬毎に合わせた調教をしているに違いない!」と考えていましたが、これは間違いのようです。
「同じ時間帯に調教をスタートするから馬毎に合わせた調教はなかなかしにくい」のだと聞いたことがあります。

リーディング上位の厩舎の特徴とデビュー済みの注目2歳馬を書いてみようと思います。

1位 杉山晴紀厩舎 注目2歳馬:クランフォード

まだ知名度が実力に追いついていないのか、ベタ買いでも儲かる水準のトップトレーナー。
今年の単勝回収率124%・複勝回収率89%は驚異的!
芝・ダート共に優秀ですが、どちらかといえば芝の方が優勢。
「持続力」に秀でた馬の育成が特に得意で、ジャスティンパレス・デアリングタクト・エルトンバローズ・ガイアフォースなどを管理しています。
短距離も悪くありませんが、中長距離の成績の方が上。
連戦でも休み明けでも走らせてきていて、弱点が目立ちません。

2位 矢作芳人厩舎 注目2歳馬:ミスタージーティー、シンエンペラー、ドナベティ、フォーエバーヤング

「世界の」矢作厩舎。
こちらも「持続力」に秀でた馬の育成が得意で、パンサラッサ・ユニコーンライオン・バスラットレオンなど持続力を武器にした逃げ馬を多く育成しています。
私は瞬発力よりも持続力の方が後天的に鍛えやすいと考えています。
上位に来るには持続力を高める力が重要なのでしょう。
芝・ダートの成績は互角。
トップトレーナーにしては新馬戦成績がイマイチで、休み明けも良くありません。
連闘が得意と言われていますが、やはり連戦してきた馬が狙い目です。
使って良くなる通り、出走回数も多い厩舎です。

3位 中内田充正厩舎 注目2歳馬:ソンシ、クイーンズウォーク

アメリカで調教助手をしていた通り、まさに「アメリカナイズ」した競走馬の育成が得意。
新馬戦は鬼の成績で、休み明けから即走らせてきます。
その反面、管理馬は早熟傾向にあって古馬になると成績を落とします。
連闘はここ数年0回!
どちらかといえば管理馬の瞬発力を強化してくる印象で、リバティアイランド・セリフォス・ダノンファンタジー・リアアメリアなどが瞬発力型だと考えています。
ダイワメジャー産駒のセリフォスを瞬発戦型に育成したのは中内田厩舎の力も大きかったのでは、と考えています。
芝・ダート共に優秀です。

4位 友道康夫厩舎 注目2歳馬:ジュンゴールド、ルージュスタニング

こちらも新馬戦成績は鬼。
芝>ダート、とはっきりと成績面に表れています。
芝の中長距離馬の育成が得意で、シュヴァルグラン・ドウデュース・ワグネリアン・ポタジェ・ワールドプレミア・マカヒキ・ユーキャンスマイルなど、一流馬は中長距離型が多くなっています。
ノーザンファーム産の管理馬が非常に多く、その要望に応えている面もあるのではないでしょうか。

5位 木村哲也厩舎 注目2歳馬:チェルヴィニア、ガルサブランカ、ソニックライン、レガレイラ

関東の厩舎がようやく登場。
天下のイクイノックスを育成しています。
木村哲也厩舎もノーザンファーム産の管理馬が非常に多く、芝>ダート、中長距離が得意、という傾向に。
ノーザンファーム産の管理馬が多いのもあって新馬戦成績はこちらも優秀。
特筆すべきは休み明け成績が抜群に良いこと。
一戦一戦が勝負という傾向が出ています。
牝馬の出走回数が多く、成績も牡馬に比べてあまり落としていません。
今年はアヴェラーレとチェルヴィニアが重賞制覇。
過去にもプリモシーン・アルビアーノ・ファインルージュなどの一流牝馬を管理しています。

6位 堀宣行厩舎 注目2歳馬:ダノンエアズロック、ゴンバデカーブース

2021・2022年はリーディング順位を落としましたが、今年は復活傾向。
タスティエーラでダービーを制して、2歳馬もゴンバデカーブースで重賞制覇。
牡馬が得意なようで、牝馬での重賞制覇は2015年のカフェブリリアントまで遡ります。
スピード能力を高めるのに秀でたイメージですが、その傾向通り、スピードと関連のある馬体重が大きい馬が多い傾向に(馬格は馬の先天的な部分も大きいですが、育成で大きくできます)。
ダノンエアズロックを+20キロで出走させてパフォーマンスを上げてきたのは驚きました。
ダートも出走回数こそ少ないものの、回収率が非常に優秀です。
新馬戦成績も鬼ですが、怖いのは出走が遅くなって初戦が未勝利戦になった馬。
いきなり走らせてきます。じっくり仕上げてから出走させてくるのでしょう。

7位 上村洋行厩舎 注目2歳馬:モンシュマン

リーディング上位としてはノーザンファーム生産馬の割合が低く、様々な生産者から馬を預かっています。
種牡馬も様々。
騎手も色々な騎手に依頼しており、流行りの「多様性」を感じさせます。
ダートの方が出走数の多いという、リーディング上位としては珍しい厩舎です。
新馬戦成績はイマイチで、休み明け成績も今ひとつ。使って良くなってくる厩舎でしょう。
年々リーディング順位を上げてきており、今後、さらなる飛躍が期待される厩舎です。

8位 国枝栄厩舎 注目2歳馬:シックスペンス、ショウナンラピダス、ルージュスエルテ

新馬戦からは仕上げてこないと有名な厩舎ですが、2020年まで遡って新馬戦は複勝率43.1%とイメージほど悪くはない印象です。
回収率も低くはなく、買う側も「新馬戦は走らない」と分かっているのではないでしょうか。
休み明け成績は良好なので、あくまで新馬戦で仕上げてこないだけと考えるべき。
「牝馬の国枝」のイメージ通り、牝馬の方が成績が良いという稀な厩舎です。

9位 清水久詞厩舎 注目2歳馬:デルシエロ

キタサンブラックを鍛えて鍛えて強くしたイメージ通り、古馬成績が優秀。
矢作厩舎同様、出走回数の多さが目立つ厩舎です。
休み明けよりも叩いた方が良い厩舎。
鍛える、という側面が影響しているのか、障害成績が鬼。
頭数は少ないのですが、障害を使った馬は出世している馬ばかり。
まだ勝ち上がっていないエンデュミオンとビップランバンも出世するかもしれません。
この厩舎も牝馬成績が非常に優秀です。

10位 西園正都厩舎 注目2歳馬:ポッドロゴ

ダートの方が成績が良いという、リーディング上位としては珍しい厩舎です。
休み明けはイマイチで、叩き良化型の厩舎だと言えます。
ハクサンムーンのイメージ通りに、芝では短距離で強い厩舎。ビッグシーザーが代表。
ただ、ダートでは満遍なく走らせてきます。
ヘリオスにタガノビューティー、メイショウフンジンがいます。

以上になります。

厩舎それぞれ特色があるのだと見えてきたかと思います。
人の癖に注目して競走馬も見てみるのも有用で、面白い発見があるのではないでしょうか。