「ブリンカーは芝も有効だが、ダートでより有効」

 初ブリンカーの馬の着用前成績をご存知でしょうか。実は驚くほどに悪く、データを見た時に間違っていないか何度も確認したほどです。単勝回収率13%・複勝回収率20%は悲惨すぎます(データは2019-2021年)。好成績を挙げている時にわざわざブリンカーを着用してくる例は稀だと言えるでしょう。着用すると一気に成績は向上します。好走率はトリプルスコアに近い水準で、単勝回収率94%、複勝回収率79%まで向上させてくるのです。これだけアップするのなら、芝・ダートともに「ブリンカーは有効」だと言えるでしょう。

 拙著では「ブリンカーはダートでより効果的」だという結論を下しています。着用すると何が変わるかといえば、まずは位置取りでしょう。陣営も位置を取ることを期待してブリンカーを着用してくる場合が多いと考えられます。着用してきたレースでの逃げ・先行の割合は35.44%、着用前が25.6%ですから、約10%もアップしています。位置を取ることのメリットが大きいのは、やはり先行有利傾向の強いダートです。

 芝では「ブリンカーが効きすぎた」という主旨のコメントを少なからず見かけます。これは芝ではダートよりも折り合いが重要だからだと考えられます。

 例として2019年のシルクロードステークスを挙げます。このレースでは、セイウンコウセイが初ブリンカーで挑みました。しかし、レースでは暴走ともいえるハイペースの大逃げに。レース後、鞍上の池添謙一騎手が「ブリンカーが効きすぎた」と述べていました。もちろん、このコメントはダートでもたまに聞くのですが、前に行ってなんぼのダート戦では基本的にデメリットよりもメリットの方が大きいのでしょう。ダートが主流のアメリカ競馬ではブリンカー着用馬が多く、対して芝主流のヨーロッパ競馬ではブリンカー着用馬が少ないように感じていますが、決して偶然ではない、と言えるのではないでしょうか。

 ブリンカーを外しても成績が低下しにくいのも芝になっています。セイウンコウセイはブリンカーが効きすぎたというシルクロードSの次走・高松宮記念で12番2着と大穴をあけました。

①ブリンカーによる位置取り改善のメリットが、ダートは芝よりも大きい。
②ブリンカーによって折り合いを欠くデメリットが、ダートは芝よりも小さい。

 以上の2点からダートの方が芝よりもブリンカー効果が大きい、と結論づけたいと思います。