追い切りのチェックポイント!

「追い切り時計だけ見ても意味がない」という意見を耳にします。騎手が発言していたのも聞いたことがあります。
一理ある意見だと思いますが、「追い切り時計」を見るだけでも有効な時も少なくないと感じています。
ここでは追い切り内容を大きく「馬なり」と「一杯」に分けます。
大雑把に言えば、馬なりの時は全体時計が重要で、一杯の時は終い失速していないかが重要です。

1:追い切り時計が極端に悪くなっている!

私は「追い切り時計が抜群!」という時に評価を上げるよりも「追い切り時計が悪い……!」時に軽視する方が有効に感じています。
「時計は出そうと思えばいくらでも出せる」と陣営が発言しているのを耳にしたことがあります。「この位の時計で回ってきてくれ」という指示があり、遅くなることも少なくないでしょう。
ですが、「明らかに時計が遅い」なんて時は馬の状態面が悪いとしか思えません(例外は、気性面から軽い調整の方が良いと判明した馬。牝馬に目立ちます)。

ロングウッドという3歳未勝利馬がいます。
今でも現役で、12/2には休み明けで1勝クラスを使ってきました。未勝利の内容・ラップからは1勝クラスでも通用するはずの馬ですが、この時の最終追い切りは一杯に追って終い失速。併せた馬にも遅れていました。
そのため状態面に不安があるのだろうと考えて評価を下げました。
結果、殿負けで完全にパフォーマンスを落としていました。
重要なのは「一杯に追ったのに終い失速していること」です。馬なり調教では失速していても終い流しているだけの可能性があり、参考になりにくい。

私が期待しているヒメナデシコは新馬戦の時が1番時計が出ていて、以来、状態面に影響があるのか時計が出ていません。前走は比較的時計が出ていたのでそろそろ通用してくるでしょう。
2歳未勝利で3戦連続2着に好走していたベアゴーゴーは、中山戦での最終追い切りで何があったのか、終いの時計が異様に掛かっていました。結果、4着と馬券外に飛びました。

このパターンで重賞で来たのはラブカンプーのスプリンターズS2着しか私の記憶にはありません。
その後、ラブカンプーは大不振に陥りました。無理をしたことが祟ったのかもしれない、と考えています。

2:最終追い切りをしていない!

連闘以外で最終追い切りをしていないパターンはかなり危険です。
重賞でこのパターンは滅多にないのですが、今年の関屋記念はサクラトゥジュールが最終追い切り抜けで出走。まずまず頑張りましたが、着外でした。
火曜の軽い運動が引っ掛かって追い切りのようになってしまったので追い切りをしなかったそうですが、こうしたトラブルで来た例は見た記憶がありません。
堀厩舎はかつてルーカスのホープフルSでも最終追い切りで放馬。そのまま出走しましたが、人気を裏切りました。
昔、アイラブテーラーが最終追い切りをせずに高松宮記念に出走したことがあります。
結果は、全くレースに参加できないまま、大差の殿負け。
諸事情で出走せざるを得ない場合があるのでしょう、頻度は極めて少ないですが、このパターンはまず来ないと思って良いでしょう。

3:調教時計が明確に良くなっている!

こちらはあまりチェックしないので、参考程度に受け止めてほしいと思います。
明らかに良くなったパターンでよく覚えているのが、函館記念2着時のアイスバブル。併せ馬では遅れてばかりの馬が大幅に先着していました。
新馬戦は仕上がり面が重要で、追い切り時計が人気に反映されがちです。
明らかに新馬戦で動いていない馬は、実力不足か、仕上がっていないか、どちらかの可能性が高いでしょう。

12/10の阪神8Rで勝利して準オープン入りしたウインルーティンは、新馬戦の時は調教時計が遅く、遅れも目立っていました。
2戦目で先着が目立つようになり、時計も良化。人気薄で3着と激走しました。
その後は更に時計面で良化しており、ようやく仕上がったのだと思われます。

新馬戦で仕上げてこない厩舎は多く、理屈上は2戦目で時計が出てくるようになれば仕上がってきて激走!というパターンも少なくないはずです。
厩舎の方針と併せてチェックできればベスト。
特に休みを挟んでの時計面が良化してきた時は要注意だと言えそうです。ただし、騎手騎乗の時は時計が出やすいので注意すべき点もあります。

先のロングウッドは惨敗することも多いのですが、調教時計と結果が連動しやすい馬です。次走、終い止まっていない調教なら狙えます。

他、チェックポイント

休み明けや新馬戦:

休み明けの時、私がよく確認するのは「一杯で多く追っているか」「馬なりで多く追っているか」です。
今は外厩時代なので、一杯で多く追っているということは、牧場で仕上げていない可能性が非常に高い。入厩して急いで仕上げようとしている証拠だと捉えています。
馬なりで多く追っている方が、すでに仕上がっているから馬なりだけで大丈夫、という場合が多いと言えます。

これは新馬戦の時にも言える話です。
新馬戦で一杯に追ってばかりいる時は、急いで仕上げようとしている場合が多く、基本的には軽視。
本数に関しては、牧場で仕上げているから少ないという場合も少なくありません。
中舘厩舎はよく「1本のみ」という追い切りで好走させてくるので、厩舎の方針も知っておくのが良さそうです。
また、休み明けの時は、鞍上で仕上がり面を確認するのも有効。
基本的にトップジョッキーが乗る時には「下手な仕上げで乗せることはできない」と考えるらしいです。
今までトップジョッキーが乗っていたのに、鞍上弱化の時は要注意だと言えるでしょう。

坂路追い中心:

元々が坂路追いしかしていない馬なら気にしなくて良いですが、そうでない馬の坂路追いだけというのは「脚元を気にしてトラックで追えない」という場合が多い。
コーナーが脚元に負担を与えやすいため、ほぼ真っ直ぐ走る坂路は脚元への負担が少ないそうです。
坂路はスピードを中心に鍛え、トラックはスタミナ面を中心に鍛える、と言えます。
そのため、中長距離で坂路追いしかしていない馬は割り引きが必要でしょう。
とはいえ、来ないという訳ではなく、ステイヤーズSのアイアンバローズのように来ることもあります。多少減点、が有効な活用方法だと思います。

ちなみに、コーナリングは乗り手の手腕も関わってきます。
ノーザンファームでは誰が乗っても差が出ないように、立派な坂路を作り、坂路中心に調整しているそうです。
レースでも新人騎手が大きく外に膨れる場面を見ると思います。
馬のコーナリング性能も重要ですが、騎手によっても差が出るとは覚えておいて良いでしょう。
坂路中心に追っていた馬が、地方移籍で追えなくなった時も注意。
かつて大井に移籍したサウンドトゥルーは坂路で追えなくなり、代わりにコース追い中心になった影響なのか、中央時代と打って変わって長距離で強い馬に変わりました。

他、通った進路、ハロー掛け直後、直前追いなど、調教は深い!と感じていますが、ここでは省きます。

私は5年ほど前に調教というファクターを重視していましたが、追い切り以外でも運動をしているのでなかなか見えにくい部分があります。
そういう経緯もあって何だかんだ馬の能力の方が重要だと思うようになりました。
調教派の方を否定する訳ではありませんが、付随的なファクターとして捉えてみては如何でしょうか。
見ていない方も多いと思いますが、多少なりとも確認しておくことは有効だと考えています。