「芝の道悪と馬体重の関係について」

競馬は、曖昧な意味のまま使われている用語が非常に多いと感じています。「非力な馬だから(芝の)道悪が堪えた」という陣営コメントを目にしたことがあると思います。

ここでいう「力」を、私は「≒馬格・馬体重」だと受け取って「陣営も分かってないな!」と少し上から目線だったのですが、もしかすると「体幹の筋肉」を指しているのかもしれません。というのも、芝の道悪だと「ノメる(=滑る)」ことがあり、それを防ぐにはバランスに関わる体幹の力が大事だろうと想像できるからです(蹄の形や繋ぎの角度などは、また別の問題です)。

先のコメントを「馬体重がある方が芝の道悪が得意」だと受け取ってしまう人は少なくないように思います。ですが、データ上では小型馬の方が道悪は得意だという結果が出ています。添付したデータは芝の「良馬場」(1枚目)と「良馬場以外」(2枚目)の馬体重別データになります(2020~2022年)。大型馬は特に、道悪を苦手にしていると分かります。体感的にも私は、昔から小型馬の方が道悪が得意な馬が多いと感じていました。

この点を3つの角度から考えてみます。

1:スピード能力と馬体重の関係
馬体重と大きな関係があるのはスピード能力です。スプリンターには大型馬が多く、ステイヤーには小型馬が多くなっています。「人間の短距離ランナーは筋肉質、マラソンランナーは細身」であると喩えられる通りです。であるならば、スピードの必要な馬場(良馬場)=大型馬が有利で、相対的に、低速馬場(道悪)は小型馬が成績を上げてくる、となるのも自然でしょう。

2:欧州競馬と日本競馬の関係
エイダン・オブライエン調教師は、日本馬を見て「どうしてあんなに太っている(マッチョの意)んだ?」と疑問を呈したことがあるそうです。実際、欧州からジャパンカップに来る馬は小型馬が非常に多い。
ジャパンカップに参戦した凱旋門賞馬の馬体重は、

トニービン 460キロ
キャロルハウス 504キロ
アーバンシー 428キロ
エリシオ 490キロ
モンジュー 484キロ
バゴ 488キロ
デインドリーム 426キロ
ソレミア 438キロ

と、小型馬が目立っています。
ヨーロッパ競馬は基本的に、起伏が激しいこと、洋芝を使用していること、天候面や水を撒くなどで道悪が多くなること、という理由から時計が遅いため、スピード能力を高めるために大きく育成する必要性が少ないのでしょう。複合的な要因があるにせよ、欧州競馬比較でも、小型馬は道悪が得意と言えそうです。

3:走法との関係
ピッチ走法の方が道悪が得意だと言われます。ストライドが小さいと四脚が地に着いている時間が長くなるので、滑りにくくなってバランスを保ちやすいというメリットがあります。小型馬の方がストライドが小さくなりやすいため、走法面からも小型馬の方が道悪が得意だと言えるでしょう。

以上、3つの角度から考えてみましたが、何だかんだ日本競馬はスピード優位のため、大型馬の方が有利であることは間違いありません。馬体重は予想のスパイスとして利用してみてはいかがでしょうか。私はジャパンカップに出走する欧州馬の馬体重は必ず確認するようにしています。反対に、凱旋門賞に出走する日本馬の馬体重を確認するのも有効でしょう。昨日の凱旋門賞では、スルーセブンシーズの馬体重の軽さを重視して高評価している予想を見かけました。4着と頑張ってくれましたね!