「馬体重という厄介な予想ファクターを考える」

競馬において、馬体重のある馬の方が好走率・回収率ともに高いというのはご存知の方も多いように思います。ですが、知っていたとしても予想ファクターとしては使いにくいのではないでしょうか。馬体重はあくまで馬の能力や適性に付随してくるものであって、馬体重ありきで買う、というパターンは「初ダートの馬」などに限られてくるように思います。

使えるとすれば、前走からの馬体重の増減でしょう。-20キロ以上の場体減は好走率・回収率ともに低くなっています。対して、10~19キロの馬体増は好走率・回収率ともに高くなっています。20キロ以上の馬体増も悪くはありません。添付した画像をご参考ください(2019-2022年のデータです)。有意な差が出ているので、知っておいて損のない知識です。

「夏は牝馬」という格言が正しいというのは、近年、だいぶ広まってきたように思います。では、季節ごとの牝馬の成績と関係あるデータをご存知でしょうか。実は馬体重がそうなのです。競走馬は季節性の生き物で、季節によって身体的特徴を変えていると、とうけいばさんはその著書の中で述べています。科学的に解明されている訳ではないそうですが、馬体重が大きい方が走る、ということを考えれば、違和感なく受け入れられるのではないでしょうか。とはいえ、「夏は牝馬」の格言もまた、ファクターとして使いにくいように思います。夏の牝馬だからといって馬券に入れていては絞りきれなくなるからです。とうけいばさんの著書では、どういう夏の牝馬を狙うべきかも簡単に書いてあります。気になった方は著書を手に取ってみてください。

私流に「馬体重」を「夏の牝馬」と組み合わせて理論化できないかと考えてみました。そこで思いついたのが、「牝馬」✕「真夏」✕「馬体増」という3つの条件のかけ合わせです。キモは真夏の定義です。念のため気象庁のサイトでも確認しましたが、日本の平均気温が最も高いのが8月。7月・9月も高い水準です。6月と10月になると少し下がるので「7~9月」を真夏の定義としました。「7~9月」の馬体増減別データは添付画像をご覧いただければと思いますが、牝馬全体平均値よりも「牝馬・真夏・馬体増」のゾーンの方が好走率・回収率ともに高くなっていると分かるでしょう。そのまま使える水準にまで至っていないのは残念ですが、何かと組み合わせれば理論化できそうにも思います。「間近の気温」などは直結してきそうです。「牝馬・真夏・馬体増」の組み合わせを使える時期もあとわずかですが、「夏は牝馬」ということは、相対的に「冬は牡馬」ということでもあります。冬場に牝馬が成績を落とす分、牡馬が成績を上げてくるのです。

このように逆のことを考える思考方法を、拙著『「永遠の初心者を脱する!」ための競馬思考』では「逆思考」と呼んで、競馬の考え方の1つだと書いています。「瞬発力戦が得意であれば、持続力戦が苦手」というように、常に相対する事柄を考えておくのは競馬において非常に有効です。亀谷さんの言葉でいえば「競走馬の能力は一定ではない」とかなり近い意味になるかと思います。「冬は牡馬」に関しては調べていませんが、調べてみれば何かしら発見があるでしょう。ご参考いただければ、と思います。

P.S.そういえば、明け3歳の牝馬が大幅減で出走してきた時はレースに参加できずに惨敗することが多いなあ……と感じていて、本命を打った牝馬が大幅減だと本命を変えるかかなり悩みますね。

質問を受けての追記。
大型馬(500キロ以上)と小型馬(439キロ以下)の馬体増減の意味合いは異なります。
画像5枚目が大型馬の馬体増減別成績。画像6枚目が小型馬の馬体増減別成績になっております。
小型馬の方が増減に敏感だと言えそうです。